第43話 王都に向けて出発
夕食の席でアランが辺境伯様に言った。
「
「うん? 何だアラン」
辺境伯様がアランにそう聞き返す。
「アメリアの事です。俺が王都に居を構えて、安全を確認するまではコチラでアメリアを住まわせて頂けないでしょうか?」
アランがそう言うとアメリアちゃんがハッとした顔をする。それを見ながら辺境伯様が言う。
「俺は構わないが、アメリア自身はどうなんだ?」
聞かれたアメリアちゃんは少し考えてから話し始めた。
「私はここに残るのは構いません。大姉様やクーガくんも居ますから」
アメリアちゃんの返事に頷く辺境伯様。
「分かった。それではアメリアはうちで責任を持って預かろう。王都に住む場所を構え、安全を確認したら知らせてくれ」
「はい、
「よし、それではナゾウ殿、訓練をお願い出来るか? ずっと心待ちにしていたんだ」
アランとの話を終えた辺境伯様が突然俺に言ってきた。
「えっ? 今からですか?」
「もち…… いや、明日の朝からだな」
アイリーンさんの怒りの眼差しに気がついて素早く言い直す辺境伯様。さすがに今からは俺も遠慮したいので助かった。
それから、雑談を交えて楽しく時間が過ぎていき、そして部屋に戻った俺とミナ。
その夜はミナの独断場だったと伝えておこう。俺は本当に心も体も癒やされた。
翌朝、朝食を食べ終えた途端に辺境伯様に有無を言わさずに訓練場に連れて来られた俺。そこには精鋭だと言う五人の騎士がいて、更に辺境伯様自身も木剣を手に持ち、訓練に参加する気がマンマンな様子。
だから、俺も木の棒を手に持ち先ずは一人一人と模擬戦を行う事にしたんだ。
みんなやっぱり強い。さすが精鋭の騎士だった。レベルは明らかに俺の方が上なんだけど、技術が違う。気づけば俺は、その技術を少しでも盗もうと逆に勉強をさせて貰っていた。
そして、それはミナも同じだったようだ。その夜、二人で話し合ったところミナもまた手合わせした相手から、こういう時はこう対処したらいいなどのアドバイスを貰っていたようだ。
二人で本当に有り難いなと話して笑いあった。
辺境伯様とクーガくんはマロに散々にされていたようだ。
訓練内容は至ってシンプルで、魔法でも物理でもマロに一撃でもいれることが出来たら終了というもの。マロは攻撃をするが、前足のみを使用して押したりするだけ。が、それがさすが神獣というところか、軽くチョイとつついた様にしか見えないのに、クーガくんだけじゃなく辺境伯様までふっ飛んでいた。うん、二人ともタフガイだったけど終わりの方はヨロヨロだったよ。
アイリーンさんがやって来てクーガくんにだけ癒やしの魔法を使用して辺境伯様にはちゃんと礼を尽くしなさいと言ってマロに土下座をさせていたのは見なかった事にしておいた。
そんな感じで五日程過ごして、遂に王都に向かう事になった。
「
「アラン、ナゾウさんやミナさん、それにアカネさんも居るから心配はないと思うけど、自身でも周りを注意して見て動くのよ」
「アラン、ホッパー様によろしく言っておいてくれ。いずれ飲みのリベンジにお伺いしますとも伝えておいて欲しい」
「お兄様、アカネ様の言う事をちゃんと聞いて大人しくしておくんですよ」
「
そう、今回はセダンさんとユリアさんはアメリアちやんの護衛としてここに残る事になった。王都に向かうのは新婚四人だけだ。あ、マロは勿論ついてくるそうだが。ミナの作る料理を目当てにしてるからな。アイリーンさんや辺境伯様は居て欲しそうだったけど、マロはついて来るの一点張りだったので諦めたようだ。
まあ、ノンビリと新婚旅行だな。馬車で向かう王都には凡そニ週間後に着く予定だけど、道中は楽しんでもバチが当たったりしないだろう。
俺達はワクワクしながら馬車に乗り込み出発した。今回は御者として俺やミナと一緒に訓練をしていた騎士さん二名が同行してくれる。もともと二人の騎士は王都の辺境伯邸に就任する予定だったらしく、俺達が王都に行く序に連れて行ってやってくれと辺境伯様に頼まれた。
けど、逆だよな。この二人の騎士は強い。レベルは低いけれども、一対一ならば俺やミナを倒す強さだ。対人戦の技能が少ない俺達を思って辺境伯様が護衛としてつけてくれたと思う。
リュウキさんとオウキさんは二人とも二十歳で、気さくな人柄だ。俺達としても道中に気を使う事がないようにとの人選だろうと思う。
出てきて初日は王国が設けている街道沿いの休憩場所での野営となった。ミナとアカネちゃんが料理を始め、俺やアラン、それにリュウキさんとオウキさんはテントの設営や、結界石での結界の準備をした。本当はミナの拠点確定も使用するから必要ないけどね。それに、マロも居るし。
ただ俺の豪邸は目立ちすぎると却下されました……
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