第34話 襲われていたのは

 俺達が近づいて行くとモンスター達がコチラを向いた。奮戦しているのは騎士のようで、一台の馬車を守っているようだ。俺とミナは頷き合い、ミナを馬車に残して俺だけがモンスターに突っ込んで行った。

 モンスターは見た目で言うならオーガだろうと思う。この世界の名前は知らないが。俺は騎士達に大声で声をかけた。


「助太刀するぞ! 後方から崩して行くから前方は確り守ってくれ。それから、俺の技能スキルを発動する。支援効果があるものだから、抵抗せずに受け入れて欲しい!」


 すると騎士達の中で指揮していた渋いおじさんが叫び返してきた。


「助太刀感謝する! だが、この数だ! 我らを気にせずに逃げてくれっ!!」


 そう言うけど、俺達もこの先に向かうから無視は出来ないんだよな。俺はそれには答えずに騎士達に剛力、豪健、剛堅の三つを何も言わずに発動した。コレで怪我をしていた騎士も治った筈だ。

 向こう側からは


「おおっ!!」

「力が溢れてきたぞっ!」

「怪我が治った、コレならいけるっ!」


 と聞こえてきたけど、俺はオーガ達を雷山槍で時に打ち、時に刺し、時に払って次々と倒して行く。俺を掻い潜り、俺達の馬車の方に向かうオーガも居るが、ミナとアカネが見守る中、アランが倒していた。コレはアレだ、姉さん女房の上に尻に敷かれるぞーと内心でニヤニヤしながらも、オーガを倒す俺。騎士達も盛り返して次々と倒していき、気がつけばモンスターは全て倒しきっていた。


 渋いおじさんが俺に近づいてきたので、俺は冒険者証を見えるように出して言った。


「冒険者のナゾウと言います。護衛依頼の遂行中です。依頼者がこちら方面に用事があり、進んでいたところでした。間に合って良かったです」


 俺の言葉におじさんは深々と頭を下げながら言った。


「このままではあるじを守れずに倒れるばかりだった所を助けて頂き、本当に感謝する。それに、素晴らしい支援効果のスキルだった。怪我まで治ったし、力も何倍にもなった。まだ、それが続いているのだが、もう支援を切って貰っても大丈夫だ。ここからは我らも遅れを取らぬようにするつもりだ」


 そう言われたが、俺は効果を戦闘終了後一時間に設定したので、どうせならと聞いてみた。


「その前に一つお聞きしたいんですが、辺境都市カルマンまではここからだとどれ位の時間がかかるんでしょうか?」


「おお、カルマンに用事があるのかな。ここからだと馬車ならば凡そ四十分ほどで着くだろう。我らも主をカルマンまで連れて帰らねばならぬ故に、もし、宜しければ案内しよう。それに、そちらの雇い主殿にも我が主と共に、ご挨拶したいのだが……」


 それならばと俺は馬車に戻り、アラン達に向こうがそう言ってきてるけどどうする? と聞いてみた。アランは


「旅は道連れとも言うし、騎士達がいれば都市に入る際に便利だろうから、いいんじゃないか」


 と言って、そのまま俺に付いてきた。そして、


「私が冒険者の雇い主であるアランです。困った時はお互い様ですし、既に礼は言って頂いたとナゾウに聞いております。ただ、都市までの案内は有難くお受けしたいと思います」


 アランがそう言ってる時に、向こうの馬車からアメリアちゃんと同い年ぐらいの男の子が駆け寄ってきた。


「アラン様、お久しぶりでございます!!」


「何と、クーガ殿! ご無沙汰しております。クーガ殿の馬車であったか。ならば益々お助け出来て良かった」


 俺はアランに聞いてみた。


「お知り合いですか?」


 丁寧語なのは人前だからだ。アランは雇い主だから、人前では丁寧語を使うようにセダンさんからも注意されていたからね。


「うん、コチラは辺境都市カルマンを治めているライダール・アギト辺境伯のご嫡男でクーガ殿だ。まだ我が国と交流が合った時にアメリアを交えて仲良くして頂いていたのだ」


「アラン様、それは僕が言う事です。それで、アラン様だけなんでしょうか……」


 おっと、この子はひょっとしてアメリアちゃんの事が…… 邪推は止めておこう。それにこの子はよく見たら獣耳ケモミミだー! 初獣人の方が男の子なのはちょっと残念だけど、それでも見た目が可愛凛々かわいりりしいから許す! (誰を許すかは内緒だ)


 それから、騎士のおじさんとも話し合いをして、俺の支援効果は一時間後に消える事も伝えた。まあ、実際は後五十分程だが。しかし、都市まで持つと聞いて、安心して護衛出来ると騎士達には喜ばれたよ。

 結局、クーガくんは俺達の馬車に乗る事になり、中でアメリアちゃんとも再会を果たして、嬉しそうな声が馭者席にまで響いてきた。

 ミナは忘れずにオーガから核石を取り、騎士達が倒した分はちゃんと渋いおじさんに渡していた。


 騎士のおじさんはアランとアメリアが隣国の王族だと知って緊張していたけど、クーガくんがかなり親密なのを見て、安心したようだ。そして、俺の横に馬で近づいてきて、


「隣に座るお方も冒険者なのか? ひょっとしてナゾウ殿と……」


 と言うので、俺の妻です。と言ったら、


「何と、そうか。愚息の嫁にと思ったが、ダメだったか」


 と落ち込んでいた。因みに息子さんも同じ護衛騎士にいて、中々奮闘していた人だし渋いおじさんの血筋なのか、かなりのイケメンなのでモテモテだろうと思う。だけど、俺のミナは渡さないけどねっ!!


 気を取り直しておじさんは名を名乗ってくれた。


「先程はアラン様と我が主との会話に割り込めずに名も名乗っていなかった。我が名はアーング・ウラン、騎士爵を賜っている。よろしく頼む。見ればナゾウ殿もミナ殿も高級冒険者(黒金)なので、われには敬語は要らぬ。立場的にはむしろわれがお二人に敬語を使わねばならぬ位だが、どうか口が悪いのは許して欲しい」


「いや、アーング騎士爵。俺達もそんなに偉い訳ではないので…… それに、出身国の文化で年上の方には丁寧語で話すクセがついてますから、気にしないでください」


「ウランでよい、ナゾウ殿。そう言って頂けるとありがたい。辺境都市にいる時に困った事があったならば我が名を出してくれれば良い。都市では辺境伯様の次に身分が高いのでな、何かの役には立つだろうと思う」


 そう言って馬を下げて自分達の主が乗ってない馬車の警護につくウランさん。うん、良い人だな。


 そして、辺境都市カルマンに着いたけど、クーガくんの鶴の一声で門番に止められる事もなく、俺達は辺境伯様の屋敷に連行されてしまった。


 アレ? 宿屋で寛ぎたかったのにな…… チラッと思ったけど、今回はしょうがないと我慢する事にした。

 

  

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