第19話 ダンジョン

 それから、マナガルムはダンジョンに案内してくれた。俺は疑問に思った事を聞いてみた。


「なあ、ダンジョンって何なんだ? どうして突然できるんだ?」


『ウム、教えてやろう。ダンジョンは神の試練であり、神の恩寵でもあるのだ。人の子らが更なる成長を目指す為に神が気まぐれに場所を選び、出現させておるのだ。ダンジョンにいるモンスターは倒せば得られる経験値が高く、更に核石も大きいので人の子の生活が豊かになるのだ』


 へぇー、そうなんだな。俺は聞いた答えに感心したけど、ミナはそう思わなかったようだ。


「それなら、出現した時にドコに出たとか知らせてくれる方が良くないですか? 場所がランダムなのは何故なんですか?」


『ウム、そこが神の試練の部分でな。見つけられるだけの力量を持って欲しいという神の願いが込められておるのだ』


「そうなんですね。試練であり、恩寵でもある。覚えておきます」


其方そなたならそんな生活をせずとも我の専属の料理人という……』


「それはお断りします!」


 うん、返事が早いねー、ミナ。マナガルムが少し落ち込んでるよ。まあ、もしもミナが了承したら俺も困るけどな。


『フム、ま、まあ良い。それでは中に入るか。言っておいたように、一階層と二階層は我も付いて行こう。そこでダンジョン内での注意点などをお主らに教えてやろう。そして、三階層以降、五階層まではお主ら自身の力で進むのだ。そうすれば恐らくお主らが望む以上のレベルになっておるだろうよ。但し、我の見立てでは攻略に四日は必要だと思うぞ。野営準備などは出来ているのか?』


 フッフッフッ、そんな事野営もあろうかと普段から食料や水はミナの収納に貯めている。既に二人だけなら何をせずとも二ヶ月は生活出来るだけのモノが入っているのだ。


『どうやら心配なさそうだな。あと、ダンジョン内では食料も手に入る。それもまた入ってから教えよう。では入ろう』


 そしてマナガルムは後方に下がり、俺が先頭、次にミナ、殿にマナガルムでダンジョンの中に入った。中は明るかった。


「ミナ、松明の出番は無さそうだよ」


「本当だ、明るいね。ナゾウ」


 俺達二人の言葉の後にマナガルムが早速ダンジョンについて教えてくれた。


『このダンジョンでは一階層は明るいようだが、ダンジョンが違えば様相も変わるので、明かりの準備は常にしておくのが正しいぞ。ここも、二階層は暗いかも知れぬしな』


「分かった、気をつけるよ。有難う」


 暫くは一本道だった。そして、カーブが近づく。そこでマナガルムが言った。


『気配察知は持っておらぬようだな。カーブの先にスライムが居るぞ。似たようなスキルを持っているなら、ダンジョン内では常に発動させておくのだ。それが危険を避ける最適解だぞ』


 俺は自分の危険察知を発動させるのを忘れていた。慌てて発動させる俺。そしたらマナガルムが言うようにカーブの先に危険がある事が分かった。


「分かった、本当だな。このカーブの先に何らかの危険があるのが分かったよ」


『ウム、コレはダンジョンだけでは無く、初めて行く場所でも有効な手段だから覚えておくのだぞ、人の子よ』


 俺は大きく頷いて心に刻み込んだ。マナガルムは本当に俺達二人の成長を助けてくれるようだ。この教えはレベルアップ以上に貴重な事だと思う。ダンジョンでのレベルアップが終わったら感謝のブラッシングと料理を振る舞おうと俺は思った。


「ナゾウ、どうする?」


 ミナが後ろから俺の判断を聞いてきた。


「ミナ、先ずは俺が出来る限り気配を殺してカーブまで進むよ。そして、カーブの先を見てみる。対処出来ると判断したらミナに合図を送るよ。難しいと思ったらミナの所まで戻る。気付かれて即戦闘になったら開始って叫ぶよ。それでどうかな?」


「うん、分かった。私は後方で待機するけど、何かの時の為に、ナゾウの五メートル後ろで待機するね。それと、ナゾウ。強力と強固はちゃんとかけてから動いてね」


 おっと、確かにそうだ。偵察とはいえ即戦闘もあり得るから、先にかけておこう。

 マナガルムは俺達二人の会話には口を挟まずに黙っている。よし、取り敢えずこの作戦で行こう。


 俺はそ~っとカーブまで近づいてユックリと目をカーブの先に出してみた。けれども道には何も居ない。ん? と思った俺は一旦顔を引っ込めた。そしたら、俺の顔があった辺りに上からスライムが落ちてきた。しまった! そうだ上にいる可能性を排除していたよ。俺は咄嗟に立ち上がり武器を構えて叫んだ。


「開始ーっ!」


 俺の叫びに反応したミナが刀を抜いて駆けつけてくる。その前に俺は落ちてきたスライムを倒した。けれども、上を見てゲンナリしてしまった。天井にざっくりと数えて二十体ほどのスライムが張り付いていたからだ。幸い、俺の槍で届くから俺は突いていった。落ちたスライムで倒せてない個体をミナがとどめを刺す。

 そうしてダンジョンでの初戦闘が終わった。そこで俺達は残心を忘れずに辺りを警戒して、脅威は去ったと判断して武器を収めた。


 マナガルムがやって来て反省点を教えてくれる。


『先走らずに二人で考えて話し合い、細かい点まで決めていたのは良かったぞ。だが、ここがダンジョン内だという視点が二人には抜けていたな。地上ならばなるほど、スライムは地面上にいるだろうが、ダンジョン内では天井のみならず、壁などに張り付いている場合もある。そこまで考慮しておくべきだったと我は思うぞ。だが、まあ初めてにしては良くやったと褒めておこう。では、核石を拾ってから先に進もうか』


 こうして、数々の教えを受けながら俺達は先に進んだ。分岐点ではこうしたら良いとかだな。ただ、マナガルムは先に教えてくれるのではなく、俺達二人が決めて、失敗したら、こうすれば良いのだとか、成功したら、こんな方法もあるぞみたいな感じで教えてくれるので、本当に為になった。そして、二階層への階段を見つけた時には俺とミナはレベル6に上がっていた。

 マナガルムの教え通りに、技能だけパパッと確認して先に進む俺達。ゆっくりと確認するのは拠点を確保してからが良いと教えてもらったからだ。但し、技能についてはその都度確認しておけと言われている。新たに覚えたり、レベルが上がった技能が次の敵や、ダンジョン内で有効な手段かも知れないからだそうだ。まあ、俺達の技能にはレベルが無いんだけど、進化はあるから確認をするようにした。


 

 

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