第18話 新たなる経験値を求めて
翌朝、俺とミナは早朝から起きて村を出た。まだ日が昇ってないけど、
俺とミナは昨夜の話し合いでレベル11を目指す事にした。
当初は俺とミナのレベルアップにも三人が付いてくる予定だったのを二人きりにしたのは、ミナもあの二人が護衛を放棄した事に気がついてたからだった。ミナとしては、アランの護衛として確りと最後までついていたなら、当初の予定どおりにしようと考えていたそうだけどね。
まあソコは俺達としては譲れなかった線でもあった訳で。勿論、今まで出来なかった事情は分かるし情事をしたかったのも分かるけどね。
「ナゾウ、今日中にレベル6になれるように頑張ろうね」
ミナが気合を入れている。俺も気合を入れないとダメだな。この世界で生きていくのに必要な身分証は手に入ったけど、俺達二人はまだまだ弱い。強くなれるなら強くなっておくべきだ。
「うん、ミナ。それにはモンスターを探さないとダメだから、探索する範囲を少し広げてみようか」
「そうだね。それと、もしも有ったらダンジョンにも入ってみたいね。昨日、セダンさんが教えてくれたけど、この世界にはまだ見つかってないダンジョンが沢山あるそうだから」
「ああ、そうだな。松明も昨日買ったし、もしも見つけられたら浅い階層を冒険してみよう」
そう、この世界にはダンジョンがあるそうだ。そして、ダンジョン内のモンスターは地上にいるモンスターよりも経験値を多くくれるらしい。実際にセダンさんはレベルが20を超えてるらしいけど、当時未発見だったダンジョンの二階でレベルアップに励んだそうだ。まあ、そんなに簡単に見つけられる程甘くはないだろうけどね。俺もミナもあったらいいなあぐらいの気持ちだ。
だ、だよね、ミナ様。なんだかミナの歩く早さがいつもより早いんですが……
そうして歩いていたら、以前漆黒の狼に追い払われた森の端っこが見えてきた。俺とミナは顔を見合わせて話し合いを始めた。
「ナゾウ、あの森にもう一回入ってみない?」
「えっ? ミナ、まだまだ無理だよ。あの狼には勝てないし、俺としてはあの狼と敵対したくないな」
「うん、それは私も一緒だよ。違うのまたあの狼さんが現れたら、今度はお願いしてみようかと思って。何だか私達の言葉を理解できそうな気がしてるんだぁ」
うーん、お願いしてみるって…… 確かに知性の光は瞳にあったけど、言葉を理解したとしても聞いてくれるかどうかは分からないんだよ。でも世界一可愛い婚約者の願いだしなぁ。よし、ここは俺が前に出てミナを守りながらお願いしてみよう。
「分かったよ、ミナ。頼むだけ頼んでみよう。ダメだった時は素直に撤退するからね」
「うん、有難う。ナゾウ」
またまた笑顔をいただきましたー! うん、コレで俺の勇気も最高潮に達しました。
でもやっぱり怖いから、以前と違う場所から、つまり見えてる端っこから森に入ってみる事にした。
うん、考えが甘い事は十分に承知してました。森に入って数メートルでまた、危険察知に反応があって、あの漆黒の狼が姿を現しました。俺はミナを背に庇いながら、必死で言葉を絞り出していた。
「えっと、あのだな。お願いがあるんだが」
俺の言葉の途中でミナが後ろから叫びだした。
「狼さん、お願い! 私達、強くなりたいの! どうかこの森で訓練する許可をちょうだい!」
ミナの叫びが終わった時に思念が俺とミナに届いた。
『ほほう、人の子よ。我にモノを願うか。願いには対価が伴うぞ、何を我に差し出す? そこの
「何をーっ! 馬鹿な事を言いやがって、ミナを差し出す位なら御免こうむらーっ!!」
思わず俺は啖呵を切っていた。だが漆黒の狼は面白そうな感情を出して俺を見ている。
『ならば何を差し出す?
そこでミナが収納からブラシを取り出して言った。
「心地好いブラッシングではダメですか?」
『フム、中々良いが足りぬな。我は食べる事がすきだが、人の作る料理は旨いと聞いた事がある。一品で構わないから何か我に作ってみせよ。それが対価だ。そして、対価は先に支払われなければならぬ』
「むっ、本当にそれだけか? 後からミナを差し出せとか言ったりしないだろうな?」
『我も
「よし、それなら信用するぞ。じゃあ、先ずはブラッシングからでいいか? その間に料理をミナに作ってもらう」
『フム、良かろう。我に付いてくるが良い』
そう言って漆黒の狼、マナガルムは歩き出したので、俺とミナは付いて行った。
「マナガルムって、北欧神話に出てくる
ミナが小声で俺に話しかけてきた。
「ああ、俺もそれを思ったよ。どっちが先かなんて分からないけど、少なくとも神獣だって言ってるから、悪いようにはならないと思うんだ」
「そうだね、ナゾウ。でも何を作ればいいかな? 村で手に入れた調味料だけじゃ難しいけど、ナゾウが見つけてくれた岩塩を利用して美味しい料理を作るよ」
『そんなにコソコソ話をせずとも良いぞ。どうせ我には全て聞こえるのだ。堂々と話すが良い』
あ、やっぱりそうだよね。それじゃ遠慮なく聞きたい事があったから聞いてみよう。
「なあ、マナガルムは神獣だって言うけど、何でこの森に居るんだ? この森は何か特別なのか?」
俺の問いかけの答えはアッサリしたものだった。
『人の子よ、気に入った場所を住処にするのに理由はないのではないか? 我はこの森が気に入って百五十年前から住んでおるだけよ。まあ、我の聖気によってこの森にはモンスターは入ってこれぬがな』
「うえっ! モンスターがいないんなら俺とミナはどうやってレベルを上げればいいんだ?」
『慌てるな、人の子よ。モンスターは居ないが、希にダンジョンが生成されるのだ。我はダンジョンは好かぬから、生成されたら潰して行ってるが、最近になってまた新たなダンジョンが出来たようだ。ソコはまだ我が潰しておらぬゆえ、お主らに譲ってやろう。階層は昨日の時点で四階層であったから、今日で五階層になっておろう。人の子がレベルアップするのにちょうど良いくらいだ。何かが中に居るときは階層の成長も止まるのでな、見事制圧した時にはそれなりのレベルにはなっておろうよ』
うおー、こんなにも早くダンジョンに入れるとは! 何てこった。でも、大丈夫か、今のレベルじゃ一階層でも厳しいんじゃないのか。
『一階層と二階層までは我も付いていってやろう。その下の階層は自分たちだけで行くのが良かろうよ。そちらの娘の心意気が気に入ったのでな、コレは我からのサービスとしておこう』
ミナ女神様のお陰でまた助けられました。それから歩いて三十分。マナガルムの巣穴に到着したようなので、俺は丹精込めてブラッシングをした。その間にミナがマナガルムが保存してた肉を使って、スープとステーキを作った。
何故かマナガルムが、どうだ、我の専属の料理人にならぬか? とミナを口説いていたが、ミナがキッパリと断ってくれていたので俺は胸を撫で下ろしたよ。
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