第17話 アランくんのレベルアップ

 それから水辺に着いた俺達は青スライムを探した。水の中に居る時には擬態化で姿を視認するのが難しい青スライム。

 ミナが壁を作ってくれて、水からスライムが出てくるのを待つ作戦を取った。作戦は上手くいって、一体ずつ現れた青スライムを落ち着いて倒す事が出来たアランは、三体目を倒した時にレベルアップした。


「やった! ナゾウ、師匠、やりました。レベルアップしました!」


 うんうん、良かったなアラン。だけど、残心を忘れてるからミナの機嫌が悪いのに気がつこうな。説教が待ってるぞ。


 案の定、ミナはアランに説教を始めて、アランのステータスの確認はその後になったよ。



名前 アラン・カイール 男 十六歳

レベル 2

職能 魔鳳まほう戦士

低級冒険者(銅)

力  13

技  18

早  11

魔  86

攻撃 (29+18)  防御 (21+20)

武器 ショートソード 

防具 冒険者の服 革の胸当て 手甲 脛当て


スキル技能

 【魔力収集】レベル1

 減った魔力を自動で収集する。一時間に2程度。


 おっ、スキルは変化してないけど、能力値は上がってるな。それに、低級冒険者が鉄から銅に変化してるよ。本当に自動認識なんだな。


 それを嬉しそうな顔を隠さずに見ているアランだが、ここで鬼師匠がアランに試練を与えた。


「さあ、次よ。アランくん。次はいよいよゴブリンを倒すのよ。さあ、行くわよ」


 何故かミナのやる気が凄い。今日中にアランをレベル3にして依頼達成しようとしてる。そんなに慌てなくてもいいと思うんだけどな。後で聞いてみるか。


 それからゴブリンを求めて歩き出した俺達。ちょうど村に戻る途中に小さな森があったので、そこを探索してみる事にした。

 そしたら恐らく村人達が休憩なんかで使用しているだろう小屋が入って直ぐの所に建てられていた。何故かセダンさんとユリアさんはそっちに向かう。


「僕とユリアは居なくても大丈夫みたいだから、ここで待つ事にするよ。頼んだよナゾウくん、ミナさん」


「あー、コホン。私はここら辺には良く来ていたが、もう少し奥の方で希にハグレゴブリンを見かけたよ。そこまで行ってみるといいと思うんだ」


 俺はピーンときたね。ヤル気だな、この二人。くそー、ちゃんと結婚してるから文句も言えないしな。普段はアランを護衛してるから出来ないだろうし、ここは大人な対応をしよう。でも、聞耳技能を発動しちゃったりして……


「うん、分かったよ。セダンさん、ユリアさん。コッチは任せてよ。俺とミナがいれば大丈夫だよ」


 俺は笑顔を心がけて二人にそう言った。既に技能は発動している。序に聞耳技能の性能の検証だぁ!


 そして俺達三人は小屋を後にして森の奥に向かった。まだ俺の耳には小屋に入ったセダンさんとユリアさんの声が聞こえてるぜ。何とユリアさんはセダンさんと二人きりだと乙女になるようだ。

 そこまで聞いて俺は技能の発動を止めた。うん、悪趣味だからね、やっぱり。検証はまた別の事でやってみる事にしよう。でも、一応二百メートル離れても意識してたら声が聞こえるのには驚いたよ。それもかなり鮮明に聞こえたからね。

 良かったよ、ミナがトイレに行った時に技能を発動しなくて。変態って言われて平手打ちを食らった上にフラレてたかも知れない。

 えっ? 黙ってたら分からないだろうって。俺はミナに隠し事や嘘を言えないから、正直に話してしまうんだ。だから、技能を使用しないと心に決めてるんだよ。


 そうこう言ってたら、本当に居たよ。ゴブリンが一体で道に迷ったかのようにウロウロしている。そして、俺達に気がついて持ってた棍棒を振り上げて襲いかかってきた。


「きたよ、アランくん。落ち着いて対処するのよ。動きはそれほど早くないから、アランくんでも攻撃を避ける事が出来る筈よ」


「ハイ! 師匠!」


 アランは落ち着いていた。振り下ろされた棍棒を半歩ゴブリンに踏みこみながら避けて、ショートソードでゴブリンの胴をいだ。見ていて素晴らしい一撃だった。 


「やりました。しかもレベルアップしたようです、師匠!」


「声が大きいわ、アランくん。ハグレのゴブリンが一体だけとは限らないから、こういう場所では小声でね。でも、おめでとう。コレで私達もお役ごめんだね」


 ミナがそうアランに告げたら、アランが


「そんな、師匠。ここで俺を見捨てるんですか」


 なんて泣きそうになりながら言っている。そんなアランにミナが静かに言った。


「アランくん、私とナゾウも自分たちの為に成長したいの。今のゴブリンを倒したアランくんの技量なら、スライムやゴブリンなら問題なく倒せるよ。だから、それらを相手にレベルアップを目指してね。私もナゾウもちゃんとアランくんを隣国に安全に連れて行けるように明日からレベルアップを目指すから。だから、お互いに頑張りましょう」


「ううっ、別れは辛いですが、分かりました。師匠。俺も頑張って足手まといにならないようにレベルアップします。頑張ります」


 うんうん、別れじゃないよね。別行動って言うんだよ、アラン。でもアランがこの先レベルアップするならこの森でやるのが安全だと思うな。後でセダンさんとユリアさんにそう言っておこう。


 それから俺達は三人で小屋に向かって歩き出したけど、俺はなるべく遅くなるようにミナに道々食べられる草や実を俺とアランに教えて欲しいと頼み込んだ。ミナも同意してくれて、もしもソロになった時でも知っていたら便利だろうという、食べ物になる植物を教えてくれた。けっこう、色々あったけど、中には食べられるけれども苦いとかの草もあったので、俺とアランは必死で味もソコソコで食べられる草や実を覚えたよ。


 小屋に戻った俺達は扉をノックした。


「帰りましたよ。アランのレベルが3になりました。これで依頼は達成です。明日からは俺とミナは別行動をしますね」


 と扉の外から声をかけたら、大急ぎでゴソゴソしてる音がとだえた。そして、まだ上着を羽織ってないセダンさんが慌てた様子で出てきて、


「えっ! もう終わり? そんなぁ…… 明日までかかると思ってたんだけど」


 なんて言ってるけど、依頼はレベル3になるまでだったからね。俺もミナと同意見でレベルアップしたいし。その後、もう一回指名依頼を出すから受けて欲しいというセダンさんとユリアさんを正攻法でミナが説得して依頼を出さないようにしてもらった。二人とも明日からは確りとアランを護衛しながらレベルアップに付き合って上げて下さいね。





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