第14話 村でのお買い物

 俺とミナ、それにアラン達三人も一緒に村唯一の武器と防具を取り扱っている店にやって来た。


 そこではドワーフのような見た目のオジサンが居た。


「ん、お客だか? 久しぶりだっぺ。何がいるだ? あっ、自己紹介しとくだ。オラァ、ドワーフ族の誇り高き鍛冶師、ドワイライだ。よろしく頼むだ」


 本当にドワーフだった。初遭遇の人族以外の種族にここは異世界なんだなぁと感慨が湧く。ミナも同じような気持ちのようだ。そこで、俺の手に持つ木の棒に目を向けたドワイライさんが、大声を出した。


「オメー! オメーの手にしてるのはまさか、カッシーの枝でねぇか!? ちょこんと見せてくんろ!」


 興奮したドワイライさんは俺の返事を待つことなく俺の手から木の棒を取った。そして、


「ま、間違いねぇだ。コレはカッシーの枝だぁ。それも上等なヤツだでよー。うーん、欲しい。けどくれって言うのも気が引けるでよー。どうすんべ……」


 と大声で呟いてチラチラと俺を見てきた。あ、くれって事ね。俺はミナにお願いして二本の予備の木の棒を出して貰う。


「なっ! ミナさんは収納も持ってるんですか!?」


 そこでセダンさんが食い付いてきたけど取り敢えず無視して、二本をドワイライさんに差し出した。


「あの、ドワイライさん。良かったらコッチなら差し上げる事が出来るけど」


 俺の差し出した二本を素早く俺の手から奪い、元々俺が持っていた方を返してくれるドワイライさん。


「いやー、悪いだなぁ。催促したみたいで。ンでもこの二本も只って訳にはいかねぇべ。なんせ中々生えてる場所が分からないカッシーだぁ。オメーらも苦労しただが。このカッシーの枝は貴重なんだぁ。加工したら最高の武器の柄になるだ。みんなはやいばばかり気にするだが、武器というのは持ち手も含めてのモンだべ。持ち手が悪ければ最高のパホーマンズは発揮出来ねぇだ。ンだ、オメーら二人に合う武器を見繕ってやるべえから、店の裏にきてその棒を振ってみせてくんろ」

 

 パホーマンズ? ああ、パフォーマンスの事か。俺は脳内で納得してから、俺達二人を店の裏に案内するドワイライさんに付いていく。後ろでセダンさんがミナさんと声をかけているが、俺もミナも取り敢えずはダンマリを決め込んでいる。技能についてはこの場所で話をするつもりは一切ないからね。


 店の裏で俺とミナが立木を相手に棒を振って見せたら、ドワイライさんが


「うん、分かっただ。それじゃ店に戻るべぇよ。二人に合う武器があるだが」


 そう言って店に戻る。俺とミナも付いていくと、店の中で陳列されてるのじゃなく、奥の部屋から武器を持ってきたドワイライさん。


「そっちのニイちゃんはコレだぁ。オラァが作った中でもいい出来の名前は雷山槍らいさんそうだぁ。雷山らいさんで採れた鉄鉱石を使用しているだ。持ってみれ」


 言われて手にした俺は、そのしっくり感に驚きつつも能力を確認した。武器の所に雷山槍と出て、+38の数字が見えた。コレは凄い。今まで一桁の数字しか無かった武器が一気に強くなったよ。俺は嬉しくてお礼を言う。


「コレは凄いです。手に持った瞬間から馴染んでますし、有難うございます。でも本当にいいんですか?」


 俺の言葉にンだンだと言いながらドワイライさんは今度はミナに武器を差し出した。


「姉ちゃんはコレだぁ。オラァが師匠から受け継いだ技術を凝らした片手剣だが、軽量化の魔法をかけてあるだが。持ってみれー」


 受け取ったミナも手にしっくり来ているようだ。そして、鞘から剣をゆっくりと抜いた。刃は片刃で日本刀のような反りがあった。刃部分は凡そ六十センチで、柄を入れても全長が七十五センチぐらいかな。そして、ミナはドワイライさんにお礼を言った。


「こんな立派な刀は私には勿体無いかもしれないけれど、頑張ってこの刀に相応しい技術を身に着けます。有難うございます」


「ンだンだ。今でも姉ちゃんの腕なら十分に扱えるだよ。でも、それに慢心せずに確りと技術を磨いていくだぁよ」


 ドワイライさんはそう言って頷いていた。それから俺とミナは防具も見繕って貰った。俺は鉄製の胸当てと脛当てと手甲は革製のモノにした。ミナは全部を革製にしたけど、中でも一番強度が高いモノにした。防具はちゃんとお金を払ったよ。二人分で金貨三枚と銀貨二十五枚だった。

 ドワイライさん曰く、武器も防具も自動修復機能も付けてあるけれど、最低でも二年に一度はドワーフの鍛冶師に調子を見てもらうのがいいそうだ。本当は一年に一度が理想らしいけどね。

 非常に満足した俺達二人は三人の方を見たら、拗ねてるセダンさんと、それを叱っているユリアさん。そして、ドワイライさんに話しかけるアランがいた。俺達は夫婦二人は放っておいて、アランの言葉に耳を傾けた。


「すまないが、私、いや、俺にも武器を見繕って貰えないだろうか? 冒険者登録をしたばかりの低級冒険者だが、明日からスライムを討伐してレベルを上げる予定なんだ。ダメだろうか?」


 アランにそう言われたドワイライさんは俺を手招き、そのカッシーの枝を貸してやってくれと言う。そして、そのままアランを連れて裏に向かった。戻ってきたドワイライさんはアランに両刃のショートソードを渡した。


「このショートソードには切れ味アップの魔法が付いてるだ。先ずはコレを手に馴染むまで使うといいだ。それから、序にこの防具を身に着けるといいだ。初心者から高級な武器や防具を持ってると、たちの悪い先輩冒険者に目をつけられるだよ。コレぐらいなら大丈夫だが」


「有難うございます、大切に使います」


 アランも満足したようだし、次は俺とミナは服屋に行く事にした。セダンさんとユリアさんはまだ話をしているけど、アランを含めた俺達三人はドワイライさんに再度お礼を言って店を出た。

 アランの知っている村の服屋に行くと、


「あらあら、あなた達、変わった服を来ているのね。ちょっと触ってもいい?」


 と俺達よりも少し歳が上に見えるオネエさんが、返事する前に俺の制服を触りだした。その手つきにゾゾッと背筋に悪寒が走るが、何とか我慢した俺。誰か褒めてくれ。


「フフッ、緊張しちゃって可愛いわぁ。坊や、オネエさんと一晩一緒に過ごしてみる?」


「いえ、遠慮しておきます。婚約者がいますので……」


 ミナが怖い顔でオネエさんを睨んでいたので、俺は即座に断りを入れた。


「あらー、なんだ。彼女がいたのね。残念だわぁ」


 そう言って離れてくれたオネエさん。アランはそんなオネエさんを見て言った。


「カリフ、冗談はそこまでにして、三人分の庶民服と、冒険者用の服を出してくれないか。この二人には替えの下着もいるだろうからソレも用意してやって欲しい。頼む」


「ウフフ、アランの坊っちゃんが言うなら断れないわね。わかったわ、直ぐに用意するわね。お代は全部で銀貨八十枚よ」


 そして、オネエさんことカリフさんがパパッと服を用意してくれて、サービスだと言って俺とミナには一着ずつ冒険者用の服をオマケしてくれた。そして、繕い物が出たら持ってきなさいと言われて俺達三人は服屋を出て、宿屋に戻った。

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