第13話 冒険者ギルド

 俺達は五人で連立ってセダンさんの案内に従い、村の冒険者ギルドの支部に出かけた。

 中は閑散としていた。


「ここは辺境の村だけど、朝のもう少し早い時間だとちゃんと冒険者達が居るんだよ。でも、今の時間だとみんなが依頼をこなしに出かけてるから、受付も空いてるし、ちょうどいいんだ」


 セダンさんがそう教えてくれた。それからセダンさんは受付に行って如何にも私は事務職一筋二十五年! みたいなオジサンに話しかけた。


「やあ、ロマーノが自ら受付にいるなんて珍しいね。どうしたんだい?」


「セダンよ、分かって言ってるだろ。そりゃ、やんごとなきお方が登録されるんだから、俺が出て受付するだろうが」


 そのままロマーノさんはアランを見て言った。


「アラン様、おはようございます。ここのギルドマスターをしているロマーノと申します。こんなナリですが元特級の冒険者です。何でも聞いて下さい」


「ああ、伝説の特級冒険者であるロマーノとは貴方ですかっ!! お会い出来て光栄です。いや、本当に、よろしくお願いします」


 おお、アランが興奮しているよ。あっ、アランから提案があったので、俺とミナはアランを呼び捨てしても良い事になったし、タメ口をきいても良い事になったんだ。アランはもう王族としては生活するつもりが無くて、隣国で冒険者として生活していくつもりのようだ。ユリアさんはそれを聞いた時に哀しそうな表情をしていたけれども、セダンさんはニコニコして聞いていた。

 まあ、俺達二人も人の人生をとやかく言うつもりはないので黙って頷いておいた。


「それで、そっちの二人も登録するのか?」


「そうだよ、ロマーノ。この二人はアラン様のご友人だから、丁寧にね」


「なっ、失礼しました。どこかのお貴族様でしょうか?」


 セダンさんの悪ふざけが始まったよ。俺は否定しようとしたら、何とミナがノッてしまった。


「はい、私は遥か遠い二ホーニア国の姫で、ミナと言います。こちらのナゾウは二ホーニア国の隣国、ジャパーナ国の王子で私の婚約者です」


 オイオイ、ミナよ。どうしたんだ? 俺が不思議そうな顔でミナを見たら、私に任してって顔をしていたので取り敢えずツッコムのは止めておいた。


「おお、それではここに三国のやんごとなきお方が!! 直ぐに登録致します。申し訳ありませんが、コチラの水晶に手を置いていただけますか」


 そう言ってロマーノさんが王宮で見たのと同じような水晶を差し出してきた。先ずはアランが手をおいた。  


「おお! 素晴らしいですな! 後で紙に印してお渡し致しますので、暫くお待ち下さい」


 そして、俺が手を置いたら変な顔で俺を見てくるロマーノさん。


「うん、うん? 何だコレ? 知らないぞこんな職能は? セダンは何か知ってるのか?」


 セダンさんに聞くロマーノさん。


「ロマーノ、この二人の結果も紙に書いて後で応接室で見せてくれ。そこで説明するよ。さあ、次はミナさんを見てくれ」


 うながされてミナが手を置いたら、また変な顔でミナを見るロマーノさん。だけど、セダンさんに言われた通りに何も言わずに目の前の機械を操作して、紙に印刷したようだ。印刷機あるんだと俺は感心してしまった。


 それから俺達五人を案内して応接室に連れてきたロマーノさんは、俺達に座るように言ってから自分も座った。


「先ずアラン様の結果ですが、職能は【魔鳳まほう戦士】です。熟練すれば空中戦も出来るようになる素晴らしい職能です。スキルは【魔力収集】で、空気中の魔力を減った分だけ自動で収集します。コチラのスキルも意識して使用すれば、収集速度が上がり、瞬時に収集出来るところまで成長可能です」


 おお! 何か凄く格好いい職能だな。空中戦が出来るようになるなんてうらやましいな。

 続けて俺とミナの方を見たロマーノさん。そして、セダンさんに


「さあ、このお二人について説明してくれ。登録初日にレベルが2や3になってる者は今までにも居たけど、このお二人は既にレベルが5になっている。それに、お二人とも俺の知らない職能持ちだ。スキルもはっきりしなかったし、このお二人はどうなってるんだセダン?」


 そう問いかけた。そこでセダンさんが話を始めた。俺達二人が異世界から召喚された事。そして、王都から第一王女により追放されて、この村にまで歩いてやって来た事を伝える。


「って事はさっきこちらの女の子が言った話はウソって事か…… まあ、それは良いか。それなら普通の口調で話をさせてもらうぞ。それにしてもフン、あの女か。まあ、それはいいとして、二人は既に戦闘を経験したんだな? それなら倒したモンスターが消えた後に石のような物が残ってなかったか?」


 言われた俺は今まで大切に守袋に入れていた魔石を全て取り出してロマーノさんに見せた。


「うおっ! こんなにか! スライムはともかくピッグヘッドオークまであるじゃないか! うん、二人はもう低級冒険者ではないな。二人は中級冒険者の銀で登録をしておこう。それと、この核石かくせきは買取可能だから、売るんなら言ってくれ。アラン様は申し訳ありませんが、規則により低級冒険者の鉄からの始まりになります。スライムを五体倒せば低級冒険者の銅に上がります。それらはお渡しするタグに自動で記録されますから、申告する必要はありません。そして、低級冒険者の銀に上がってから、依頼を五件達成したら中級冒険者の鉄になれますので、頑張って下さい」


「ああ、勿論頑張るぞ。それと、ロマーノさん。私の事は呼び捨てで頼む。私はもう王族として生きていくのをやめるつもりなんだ。一介の冒険者として生きていくつもりだ。だから、言葉遣いも低級冒険者に対するもので構わない」


「分かりました、いや、分かった、アラン。これからはそのつもりで接するようにしよう」


 そして、セダンさんが俺達二人に指名依頼を出してくれた。先ずはスライムを倒すアランの護衛だった。倒してアランのレベルが3になるまでの依頼で、一日に金貨一枚という依頼だった。


「ロマーノさんにお聞きしてもいいですか? この依頼は相場としてはどうなんでしょうか?」


 ミナは頼りになるなあ。俺はあっさりと引き受けるつもりだったけど、ミナはちゃんと確認をしてくれている。惚れ直したよ。

 ロマーノさんの返事は


「先程言ったように二人は中級冒険者の銀になった。ここで少し説明しておくと、低級冒険者は下から鉄、銅、銀の三つの位があり、中級冒険者は下から鉄、銅、銀、金の四つの位がある。更にその上の高級冒険者は銅、銀、白銀、金、黒金の五つの位があって、その上が特級冒険者になる。特級冒険者には位がない。白金のタグになるんだ。それが冒険者の制度になるんだが、中級冒険者を一日拘束した場合に支払われる相場は凡そ銀貨二十枚〜三十枚だな。勿論、二人ならその倍だと思えばいい」


 と冒険者の制度を含めて教えてくれた。なら、今度の依頼は相場以上なんだな。俺は単純にそう思ったがミナは違ったようだ。


「一日拘束の条件が違えば金額は変わりませんか?」


「鋭いな。確かにその通りだ。護衛依頼ならば大体銀貨四十枚〜七十枚になるな。金額の違いは依頼者が腕を見て決めたり、ギルドが依頼者に出している信頼度を見て決めたり、依頼者の金銭的事情だったりと様々な要因がある」 


 すげーよ、ミナ様! もう一生ついていきます。


「そうですか、有難うございます。それじゃ、相場並みの依頼だから、どうするナゾウ?」


 ミナに惚れ直していたら問いかけられたので、俺は答えた。


「勿論、受けよう。ただその前に核石かくせきを売ったらそれで買える武器と防具を買おうよ。それからで構わないか、アラン?」


「ああ、勿論だ。二人にも今出来る万全の体制を取ってもらいたいからな」


 こうして、いきなりだけど中級冒険者の上位になった俺達二人は先ずは核石かくせきを売るためにロマーノさんに連れられて買取場所に向かった。


 全部で金貨が八枚になったのにはちょっと驚いた。スライムのが多かったけど、意外と高く買い取ってくれるんだな。

 よし、それでは武器と防具を買いに行こう! 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る