第12話 第二王子も登録するそうです

 部屋でミナと決めた事は、先ずはギルドに登録してこの世界の身分証を手に入れる事を優先する。それから、レベルを10まで上げる。出来れば11まで上げたいけど、そこは臨機応変に行く事にした。それから、この世界の物価を知る事と魔石の価値を知る事。今、俺の守袋に入ってる魔石はどれだけの価値で、何に利用されているかも知りたい。


 そんな感じで二人で決めてお互いに納得したので、寝る事にしたのだが……

 何故だ、ベッドは三つあるのに何故俺とミナは一つのベッドで寝ているんだ。しかもミナのリクエストで互いに顔を向けた状態で……

 眼鏡を外したミナが最高に可愛くて、幸せなのはいいが俺も男だ。やっぱりそういう欲望というものはある。しかもマシュマロのような柔らかいモノが俺の背中にではなく、ちょうど胸の少し下部分にフンニャリと当たった状態だ。

 こ、これは新手の拷問なのか? それとも神の試練なのか? 俺は心に決めている。十八歳になるまではそういう行為は行わないと。そして、十八歳になったらミナに結婚を申し込む事も。


 くぅーっ、が、我慢だ、俺。耐えるんだ。そう悶々としていたらいつの間にか俺も寝ていたようだ。けれども、起きた時に目の前にあるミナの顔が少し赤い。


「あ、あのね、ナゾウ。その、当たってるの……」


 何がと思ったが俺は一瞬で悟った。


「ち、違うんだ! ミナ! こ、これは生理現象で、朝には必ず起こる事なんだ! 不純な気持ちになったからじゃないんだっ!」


 俺はミナから離れながら必死に言い訳をした。その俺にミナが


「や、やっぱり私じゃそんな気持ちにならないよね」


 なんて言って少し拗ねている。いや、そんな事はないぞ! 俺はそんな気になってるぞ! ミナ!!


「ミナ、そんな事は無い! だけど俺は心に決めている事があってだな、だから、もう少し待って欲しいんだ。けれど、その気はミナに対してあるから、それだけは信じてくれ」


 俺はミナに力説した。そんな俺が面白かったのだろう。ミナはクスクス笑いながら


「ゴメンね、ナゾウ。本当は分かってるの。でもちょっと意地悪してみたかっただけなの」


 そう言ってくれた。うん、可愛いな。世界で一番だぞ、俺の彼女、いや婚約者は。俺はそう思いながらミナを優しく抱きしめた。そこにノックも無しに入ってきた邪魔者がいた。


「おはよう、二人とも。おや? 邪魔だったかい? いや朝食でも一緒にどうかとアラン様が仰ってね。二人に聞いてみようと思って。ああ、気にせずともいいよ。この部屋はちゃんと鍵がかかっていたからね。自慢じゃないが、この程度の鍵なら五秒で僕は開けられるんだ。ああ、朝食はあと三十分後だから、どうするかな? あ、そう。一緒に食べるんだね。じゃあ、アラン様にはそう言っておくよ。それじゃ、三十分後に。ああ、続きをしてもいいけど出来れば遅れないように頼むよ」


 言うだけ言って出ていったセダンさん。俺とミナは顔を見合わせて


「今ミナは返事をした?」

「ナゾウ、いつの間に返事をしたの?」


 と互いに聞き合っていた……


 それから三十分後には宿屋の食堂に五人が揃っていた。俺、ミナ、アランさん、セダンさん、ユリアさんだ。そして、セダンさんがカマしてくれた。


「いやー、部屋に入ったら乳繰りあってたのにはビックリしたよー」


「ちっ、乳繰りあってなんかない!」


 俺の反論と共にアランさんも


「またノックもせずに、鍵も勝手に開けて入ったのだろう、セダン。それをして父上から大激怒されたのをもう忘れたのか?」


「ああー、ありましたねぇ。でもあの時はナイスタイミングだったと思いますよー。何せ公爵夫人を手篭めにしようとしてたんですから」


「なっ! それは私も聞いてないぞ! 本当か!」


「はい。本当ですよ。だから、カール公爵がアラン様の支援を表明してくれてるんですよー。僕に感謝して下さいね、アラン様」


 うーん、主従関係なんだけどセダンさんの方が少し偉そうに見えるな。俺がそう思っていたらアランさんが


「ああ、すまない二人とも。セダンとユリアは夫婦揃って私の家庭教師をしてくれていてな……」


 そう言って俺とミナを驚かせた。


「夫婦!!」

「夫婦!!」


「いや、そこまで驚く事か?」


 何故かユリアさんからツッコミが入った。だって、昨日の様子だけでは夫婦関係だなんて想像もしてなかったからな。


「あの、失礼ですけどお二人の年齢をお聞きしても?」


 ミナが質問する。


「ああ、僕が二十八でユリアは十九だよ。夫婦関係になったのは一年前だけどね。この国の法律で男女共に十八にならないと夫婦関係になれないんだ」


 良かった。欲しかった情報が一つ手に入った。俺はそう思いホッとした。


「あ、でもユリアと初めて乳繰りあったのはユリアが十六の時だよ」


 セダンさんが要らない言葉を口にした瞬間に、ユリアさんの手からフォークが飛んだ。けれどもそのフォークはセダンさんの顔の前で見えない何かに突き刺さって止まった。


「チッ、空障壁か」


 ユリアさんが舌打ちと共にそう言った。


「ハッハッハッ、ユリア。君の物理攻撃は僕には通用しないよー。いい加減、覚えようね」


 セダンさんが笑いながら言って言葉を続けた。


「だから、愛し合っているなら十五からは乳繰り合うのは合法だから、君たち二人も遠慮なく乳繰り合ってね」


 ミナは顔を真っ赤にして俯いている。そして和やかではない食事が終わり、セダンさんが言った。


「さあ、ギルドに行って登録をしよう。今日はアラン様も登録するから、ちょうどいいよ」 


 俺は疑問に思って聞いた。


「えっと、護衛対象者であるアランさんも登録するんですか?」


「ああ、ナゾウ。私の方が年下なんだし、呼び捨てで構わない。私もナゾウやミナにはくずした口調で話しかけたいしな。それと、私が登録するのはセダンやユリアは隣国でも通用する身元証明を持っているが、私は何もないのでな。手っ取り早く手にいれる為に私も登録する事にしたんだ」


「違いますよ、本当はアラン様は冒険者に憧れを持っていてですね。せっかく今なら王族から抜け出せるチャンスだから、この機会に登録してしまえって考えたんですよ。この事は私が言ったって言うのはアラン様には内緒ですよ」


「セダン、私を目の前にして内緒も何もないだろうが……」


 うん、俺とミナもそう思ったよ、セダンさん。




 

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