第8話 村を目指して

 辺境の村を目指して歩く俺達。話はレベルアップの条件と、技能についての再確認だ。今は二人ともレベルが5になっている。

 レベル1から2になるのに必要な経験値は五で、2から3になるのに必要な経験値が十。3から4になるのに必要な経験値が二十。4から5になるのに必要な経験値が四十。つまり、俺達二人は経験値が七十五になってる計算だ。次のレベルに上がるには八十の経験値が必要だから、二人してあのコブタオークが四体出てきてくれないかと期待して旅を続けていた。

 勿論、街道があるのでそれに従って進んでいるから、モンスターに遭遇する確率はかなり低いだろうけど。街道はどうやらこの世界の人々が道を作る際にモンスターを倒してから、道をつくったようでその近くにはモンスターは滅多に現れないようだ。と、俺とミナは推測している。


 そして、技能は今の所【奇数】レベルで増えたり進化したりしてる。今後もこれが続くのかは分からないけれども、取り敢えずは奇数のレベルアップは要注意で確認する事にした。勿論、偶数でも確認はするけどね。


 それから俺は手にした強壮剤を守袋に仕舞った。昨夜も寝る前に生成したのでコレで十粒になった。ミナから言われて一日五粒を生成して、大事にとっておく事にしたのだ。

 生成に必要なマナだけど、どうやら気力のようなモノみたいだ。五粒生成したら体ではなく、心に倦怠感が生まれるので。それでも俺はミナが隣を歩いてくれてるので、然程疲れは感じてないけど。


 そうそう、俺達は二人ともソーラー電池の腕時計をしているから、時間は分かる。そしてその時計である程度の行動を決めていた。途中で軽い休憩をはさみながら、歩いてきてそろそろ十一時半になるので、昼休憩が出来る場所を探す事にした俺達。今回はミナに任せた。ミナなら水も出せるから、俺の技能の出番は無い。

 そう思うと旅の間はミナにおんぶに抱っこされた気分になるけど、ミナが笑顔で


「私に任せて」


 と言ってくれるので俺の気分も落ち込む事はない。それに、危険察知は使用してるしな。

 場所確保でミナが探してくれた場所で、昼休憩を取るとことにした俺達は、壁を出してトイレを囲み、俺は焚き火の準備を進める。

 木の枝なんかも道中で集めてミナの収納に入れてもらってるから、困ることもない。そして、竈代わりの石も拾ってあるしな。


 鍋にミナが水を出して、俺が守袋から岩塩を砕いた塩を出してミナに渡す。主食の芋もミナの収納に百個ほど入ってるから、恐らく辺境の村までもつ筈。いや、もってほしい……

 もたない事態を考えてこれからは食料も探しながら村を目指そう。そう思った俺はミナにもそう伝えた。


「あ、そうだね。さすが、ナゾウ。私は十分だと思ってたけど、村に着く前に無くなる可能性もあるよね。うん、分かった。進むのが少し遅くなりそうだけど、食料も探しながら村を目指すね」


 そう言って感心してくれるミナに俺は心を癒やされながら、ミナが作ってくれたご飯を食べた。

 それから後片付けをして、三十分ほどマッタリとした休憩時間を過ごして、また街道に出て進む事にしたけれども、食料を探すなら街道沿いに見える森に入ってみようという事になり、俺達は道をそれて森を目指した。


 街道が見える場所をキープしながら森に入る事にして、入った途端に俺の危険察知に反応が出た。まだ、五十メートルぐらい離れているけど、俺は武器を構える。それを見たミナも武器を構えた。

 そして段々と近付いてきて、姿を表したのは一頭の狼だ。漆黒の毛を逆立てて、俺達二人を威嚇してくる。どうやら縄張りに不用意に入ってしまったらしい。俺はミナに前を向いたまま下がって森から出ようと小声で伝えた。

 何故なら目の前にいる狼からは出ていくなら襲わないというような感情が読み取れたからだ。威嚇だけで必要以上に近付いてこないのもその推測が正しいと思えた。


 なので、そのまま狼を見ながら下がって森を出たら、狼も森の奥に戻っていった。


「うわー、ビックリしたね。あの狼もモンスターなのかな? どう思う、ナゾウ」


 ミナが息を吐きながらそう聞いてきた。


「うーん、どうなんだろう? 普通に地球にいる狼よりは体高も体長も大きかったけど、ひょっとしたらこの森の主で、森を守ってるかもしれないな」


「うん、そうだね。森から出たら見逃してくれたし、悪い狼じゃないよね」


 俺達二人はこの森で食料を探すのを諦めた。探すのはもう少し先に進んでからにしようと決めて、街道に戻って村を目指す。そして、今日もどうやら村には着きそうにないと判断した。 


 時間が少し早いけど、午後三時半になったので野宿する場所を探す事にした俺達。今度は俺の水源探知も併用して場所を探す。ミナの水にも制限があるから、入れ物が手に入るまでは節約しようという事にしたのだ。

 先程入った森とは反対側の場所を目指して歩いていき、途中でミナの場所確保と違う方向を俺の水源探知が示したので、ミナの指示に従って進むと、その方向にも水源がある事を探知した。

 そして、小川が流れて木々がまばらな場所に出たら、


「うん、技能が示しているのはココみたいだよ」


 とミナが言った。


「よし、それじゃ今日はココで野宿しよう。ミナ先生、よろしくお願いします」


 俺がふざけてそう言うと、


「フフ、先生に任せなさい!」


 とミナもノリノリで返してくれた。昨日と同じようにトイレを出して、壁で囲いこむと、次は寝床用の壁を出したミナ。俺はその間に小川を見てみた。


 魚がいる! それも中々食べ応えのありそうなサイズのヤツだ。その魚が大きな岩の下に入ったのを見た俺は、その岩に強力を使用して持ち上げた大石を力いっぱいにぶつけた。

 プカーと水面に浮かんだ魚が五尾いたので、手で掴んでミナの所に持っていったら、


「やったー、ナゾウ。このお魚、食べられるよ。それも美味しいんだって。でも、捌く道具がないからどうしようかな?」


 と最後は困った顔をしたミナに、俺は黙って石で作った包丁擬きを渡した。

 フッフッフッ、出来る男の俺は道端で拾った長さと平たさがちょうど良かった石を、石を利用して包丁のような形に加工したんだよ。いつの間にって? ミナがトイレや壁を出してる間にだ。強力ってこんな時にも役に立つのだよ。


「うわー、ナゾウ。有難う。これなら捌けると思う。今晩はご馳走だね」


 ミナの笑顔に俺は心でご馳走様と言ったよ。うーん、お腹は膨れないけど胸は幸せで一杯になったね。その晩は塩焼きの魚が二尾加わって、俺達は満足して眠りについた。相変わらずミナは俺の背中に抱きついて眠るのだが、俺もお腹一杯だし妄想が限界を迎える事なく眠る事が出来たよ。


 寝る前に俺は忘れずにちゃんと強壁をかけた事をここに報告しておきます。

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