第6話 オーク? だよな
泉まで何事もなく戻れたし、昼まではまだ時間があったので、何か食材は無いかと二人で一緒に泉の周りを探す事にした。と言ってもミナの技能頼りになるんだけどね。
「おっ、ミナ。コレはどうかな? 春菊に似てるけど」
「えっとね…… ナゾウ、ゴメンね。コレは毒草なんだって。食用不可って出ちゃった」
ミナが悪い訳じゃないのに謝ってくれる所も可愛い。そうそう、俺は太ってるフリはもう止めて、腹と腰に巻いていた座布団を既にのけている。
ミナは座布団には気がついてなかったようで、かなり驚かれたけれども、それでも健康体(見た目)の俺を見て喜んでくれた。
「あ、あのね。顔はスッキリしてるのに、お腹や背中にお肉が付いてるから、本当は来週の月曜日からお弁当を作ってこようかと思ってたの。でも、こうして本当のナゾウを見たら必要なかったんだなって分かったから…… 嬉しいかな」
少し寂しそうに言うミナ。何だってーっ!! 日本に居たら愛妻(妻じゃない)弁当が来週から始まっていたなんて! 俺は内心で愕然としたけども、笑顔でミナに言った。
「でも、今朝作ってくれた料理も本当に美味しかったよ、ミナ」
「でも、アレは水で煮ただけだから…… 本当はもっと美味しいのをナゾウに食べて貰いたいの」
うん、もうそろそろ俺の理性も飛びそうです。抱き締めたい!! グゥーッ、だが、ダメだ! 嫌われたくないからココは我慢だっ、俺。
俺は爽やかな笑顔でミナに言った。
「俺にとっては、ミナが作ってくれる事が一番の美味しさの秘訣だよ」
俺の言葉に顔を赤くして、
「もう、ナゾウ。そんな事言われたら恥ずかしいよ〜」
なんて照れている。が、我慢、我慢だ。手が脇から外れてミナの方に向かおうとするのを全筋力を振り絞って俺は堪えた。
それから、約二十分後である。泉から少し離れた場所に白っぽい岩を見つけた俺は小さめのを手に持ってミナに見てもらった。俺の想像通りならコレは……
「凄いよ、ナゾウ。コレ、岩塩だよ。細かく砕けば普通にお塩として利用可能だって。まだあるの? それじゃ取り敢えず拠点の壁に運べるだけ運ぼうよ」
ヨシッ! 想像通りだ。ミナのテンションも爆上がりした。それから、二人で岩塩を集めて壁に運んだ。朝、ミナが拾った鍋の中に小さめの岩塩を入れて、石を利用して砕いた。そして、少し手に取って舐めてみたら、塩なのに塩辛くない。
イヤ、
「塩だけど、美味しいね。凄い発見をしてくれたね、ナゾウ。有難う」
満面の笑みを俺に見せてくれたミナ。俺は幸せモノだー。
そして、その塩を利用してミナが芋と葉っぱの潮汁を作ってくれた。美味い。芋は自生してるものだけど、数はまだまだあるので、少し余分に掘らせてもらった。葉っぱは、ミナによるとクレソンと春菊のあいのこのような草らしく、栄養価も高いそうだ。実際にはこの世界では薬にも利用されてるらしい。なので、それも余分に取らせてもらって、壁の中で陰干しを行った。
村に行った時にひょっとしたら役に立つかも知れないからだ。
お腹も一杯になり、少しだけ休憩したらレベル5を目指してモンスターを探す。
狙いはゴブリンなんだけど、俺の危険察知に反応が出て、しかも回避する間もなくソイツらは現れた。
うん、オークだよな…… 俺はミナと顔を見合わせた。二体で現れたソイツらは、ラノベで良く読んだオークとは少し違っていた。何故なら、その頭部はイノシシ顔じゃなく、コブタ顔だったのだ。ミナが小声で言う。
「ナ、ナゾウ。気をしっかり持って。アレは愛らしいコブタじゃなくて、モンスターだよ」
「い、いや、ミナも、しっかりと意識するんだぞ。アレはモンスターだ」
その愛らしい瞳に騙されそうになるが、錆びた剣を持ったオークだろうモンスターは、俺達に襲い掛かってきた。俺は俺とミナに強力と強固を即座にかけて、振り下ろされた剣を木の棒で受け止めた。勿論ミナの前に出て、二本ともだ。
受け止めて思ったのは、力が強いと思っていたオークだけど、今の俺の方がだいぶ力が上のようで、剣を受け止めたまま、棒を捻るとオークの手から剣が飛んで行った。コレならと思い、
「ミナ、力は思ったよりも弱いからミナでも倒せると思う。俺は右側を倒すから、ミナは左側を倒して」
「うん、分かった。ナゾウ、気をつけてね」
俺を気遣う余裕を見せてミナが左側のオークの頭に棒を振り下ろした。
渾身の力を入れていたのだろう。棒はコブタ顔の脳天を叩き割り、爆散させてしまった。
それを横目で見た俺は、加減をして右側のオークを倒した。
「うーん、ナ、ナゾウ。ズルいよー。私のを見て加減して倒したでしょ……」
ミナが体に付いたモノを清潔で即座に消してから俺に恨みがましい上目をくれた。
うん、その上目遣いも可愛いです。俺は脳内記憶庫にしっかりと保存した。
「イヤ、ゴメンよ、ミナ。でもコレでレベルが上がったよ」
俺は素直にミナに謝り、そしてレベルアップした事も告げた。
「あっ! 本当だ。私も上がってる!」
ミナは爆散に気を取られてレベルアップに気がついてなかったようだ。俺達二人はレベルが上がったので、拠点まで戻る事にした。勿論、ゴブリンのよりも大きな魔石二つはちゃんと忘れずに拾ったよ。
拠点に戻ってからミナがどうしても水浴びをしたいと言う。清潔でキレイになったのは分かっているけれども、心の中では水で流さないとキレイになった気がしないそうだ。
けれどもタオルもないし、と俺が言ったら
「まだお昼を少し過ぎただけだから、暫く待てば体も直ぐに乾くよ」
とミナが言う。イヤ、待つんだ、ミナ。それは俺の理性にはハードルが高すぎるんだ。俺の微妙な顔を見て気がついたのだろう。
「ナ、ナゾウになら見られてもいいけど、まだ恥ずかしいから、乾くまでは壁でちゃんと体を隠すから……」
真っ赤になって俯きながらそう言うミナ。うん、ソレはソレで俺の妄想がヤバくなりそうなんだが。だが、俺は笑顔でミナに言った。
「ああ、勿論だ。それと、冷えると困るから壁の内側に一応焚き火をじゅんびしてから水浴びしたらいい。それなら体も早く乾くよ」
「う、うん。そうだね、そうする」
そう言ってミナは泉の側に壁を出して、火を熾してから水浴びをして、二十分後に服を着て壁から出てきた。
「ふうー、サッパリした。ナゾウは水浴びしなくても大丈夫?」
そう笑顔で聞いてきたミナに俺は
「うん、俺は水浴びしなくてもいいよ。ミナの清潔で体だけじゃなく、心もキレイにしてもらってるから」
と爽やかな笑顔で言い切った。
ミナが水浴びしてた時の俺? うん、頭の中の妄想と戦闘していたよ。何とか理性が勝利してくれたよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます