第3話 先ずは検証してみよう

 馬車が見えなくなってから俺は三那さんに声をかけた。


「三那さん、職能や技能スキルを詳しく検証してみない?」


 と俺が声をかけると、


「あの、あのね、那三くん。その、異世界だし、お互いに呼び捨てで呼び合うようにしない…… かな……」


 最後の方は小声になり顔を少し赤くしながらそう言ってきた。なに、この可愛い女子は。俺はもう絶対に三那を護ると心に再度誓い、うんそうしようと笑顔で返事をした。


「それじゃ、ミナ。職能と技能スキルについて自分で分かった事を教えてくれる?」


「うん、あのね。【家事見習い】は補助技能として、あの水晶で表れなかった項目があるの。料理と清潔が使用できるみたい。それから、技能スキルの【野宿】はその時に一番安全な場所を知る事が出来て、その場所にトイレを創造出来るみたい」


 おおー、ソレは凄い。俺がそう思っていたら、ミナが、


「ナ、ナゾウの職能と技能スキルはどんな感じなのかな?」


 と、言い慣れない呼び捨てで聞いてくれた。その照れた感じも可愛いな。


「俺の職能の【丁稚でっち】は補助技能として、水がある場所を知る事が出来るのと、効果範囲は狭いようだけど、危険察知が出来るみたいだ。それと、技能スキルの【きょう・ごう】だけど、今の所使用可能なのは三つで、強力ごうりき強健きょうけん強固きょうこが使用できる」


 俺がそう言ったら、やっぱりとミナが呟き、言葉を続けた。


「ナゾウの技能スキルはチートじゃない。どうしてあの時王女にウソを吐いたの?」


 と聞いてきたので、俺はアッサリと白状した。


「だってミナと別々になるなんて俺には無理だから」


 そう言ったら顔を真っ赤にしてミナが


「うん、有難う。ナゾウ」


 と満面の笑顔で言ってくれた。抱き締めても良いですか? この素敵な女子を。俺はその衝動を抑えながら、二人の能力値を何とかお互いに見えないか検証を始めた。そして、【能力値開示】でお互いの能力が見える事を発見した。ミナが。

 くっ、俺が発見したかった。


 俺達の能力値は、


名前 ナゾウ(旦 那三) 男 十七歳

レベル 1

職能 丁稚

力  20

技  15

早  22

攻撃 39  防御 (28+5)

武器 無し 防具 異世界の学生服

職能補助技能

 水源探知

 危険察知(効果範囲は自身の半径二十メートル)

技能スキル

 【きょう・ごう

強力 自身の力を二倍にする

強健 自身と任意の相手を丈夫にする

強固 自身と任意の相手の防御を1.5倍にする



名前 ミナ(奥 三那) 女 十七歳

レベル 1

職能 家事見習い

力  12

技  20

早  10

攻撃 29  防御 (21+5)

武器 無し 防具 異世界の学生服

職能補助技能

 料理(食材を見たら料理方法が分かる)

 清潔(服や体、飲食品の汚れを無くす)

技能スキル

 【野宿】

場所確保 安全な場所を知る事が出来る

トイレ  トイレを創造出来る


 こうして二人の能力の検証が終わった。それから俺達は道を進み、言われたように辺境の村を目指していた。

 そして、今から俺は最大の問題を検証しようとしている。俺の目の前には怪物モンスターがいる。不定形な形だが、目もあり、口もある、あの某キャラのように愛らしい見た目ではない、スライムと呼ばれるモンスターが、俺達二人の行く手を阻んでいた。

 俺の手には道中で拾った木の棒が握られている。ミナの手にもだ。それにより、攻撃の数値が二人とも+3になっている。それがどれだけの強さなのか俺達には分からない。だから俺はこのモンスターを、俺達を捕食しようとしているスライムを倒そうと考えた。ダメな時は逃げるしかないけれども。

 取り敢えず俺は技能を発動した。ミナに強固を、俺自身には強力を。能力を確認したら、力が二倍になっていて、攻撃が42から51になっていた。

 それを確認した俺は木の棒をスライム目掛けて振り下ろした。

 木の棒が当たった瞬間にスライムは爆散した。


「へっ?」 俺の声。

「えっ?」 ミナの声。


 俺の目の前にはスライムの色(赤)のシミがあった。そして、小さな赤い石が転がっている。


「オ、オーバーキルだったね……」


 ミナがそう言って俺に声をかけた。


「だ、だったね。ビックリしたよ。次にもしスライムに遭遇したら技能を使わずに対処してみるよ」


 そう言ってミナを振り返った俺。ミナは何も言わずに俺に技能をかけてくれた。


「清潔!」


 爆散したスライムの名残が俺の体から消えていく。


「有難う、ミナ」


「ううん、それよりもナゾウ。アレって魔石かな?」


 ミナが指差したのは赤い小さな石だ。俺もそう思うからそれを拾ってポケットに入れた。そして木の棒を見てみたらスライムを通り越して地面も叩いてしまった所為で先が折れてしまっていた。俺は新しい木の棒を探して拾う。その棒を持ったら攻撃が+4になった。俺はそっちをミナに渡して、俺がミナが持っていた棒を持つ事にした。僅か1とはいえ性能が良い方をミナに持っていてもらいたかったのだ。


 それから更に歩く俺達。するとまたスライムが現れた。今度は水色だった。そしたらミナが


「ナゾウ、私がやってみる」


 と言うので場所を変わり、俺はミナに強固をかける。ミナは慣れない手つきだけど棒をスライムに振り下ろした。


 ブシュッ! という音を立ててスライムは潰れて地面にシミを作った。爆散はしなかったので、普通に今の能力値でスライムを倒せる事を知る事ができた。後にはまた水色をした小さな石が残されていた。それを拾って俺に渡すミナ。


「ナゾウが持っててね。私の制服だとポケットが少ないから」


 それもそうだなと思い、俺はズボンのポケットに魔石(と思われる小石)を入れた。それからは道を進む度に現れるスライムを倒し、ミナが五体目のスライムを倒した時にレベルアップした。俺も次で五体目になるからレベルアップするかもと思っていたけど、先ずはミナの能力値がどう変わったのか見せて貰う事に。



名前 ミナ(奥 三那) 女 十七歳

レベル 2

職能 家事見習い

力  12→15

技  20→21

早  10→12

攻撃 (33+4)  防御 (24+5)✕1.5 

武器 木の棒 防具 異世界の学生服

職能補助技能

 料理(食材を見たら料理方法が分かる)

 清潔(服や体、飲食品の汚れを無くす)

技能スキル

 【野宿】

場所確保 安全な場所を知る事が出来る

トイレ  トイレを創造出来る

  

 技能が増えたりはしてなかったけど、力、技、早の数値が上がっていた。それにより、攻撃と防御の基礎数値も上がっていた。そして、戦闘が終わっても俺の強固の効果は残っているようだ。

 ミナにはいつまで残っているのか調べて貰う為に、五分おきぐらいに能力値を確認して貰う。


 それで分かったのは強固は凡そ十五分ぐらいの効果時間のようだ。次に俺は強健を俺自身とミナにかけた。効果時間を知る為に。

 そのまま道を進んでいたら、目の前にスライム以外のモンスターが現れた。


「ナゾウ、アレって、アレだよね」

「ミナ、アレはアレだな」


 俺達二人は頷きあう。目の前にはミナよりも背が低く、俺達と同じように木の棒を持ったゴブリンと思われるモンスターが三体居た。

 俺はミナに声をかけた。


「ミナは取り敢えず下がってて。俺が一人で相手をしてみるよ」


 俺がそう言うと


「ナゾウ、私も一体ぐらい相手をしてみたいの。自分の強さを早く正確に知る為に」


 と返されたので、俺は分かったと頷き、ミナに強固をかけてから、


「ヤバイと思ったら直ぐに下がるんだぞ」


 と言っておいた。それから、俺は強力を自分にかけて、ゴブリン達に近づいていった。ゴブリン達はキィーキィーと騒ぎながら棒を振り上げて襲いかかってきた。縦一列で……


 結局、二体を俺が難なく倒して、三体目はミナが危なげなく倒した。そして、俺もミナもレベルアップした。 





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