第2話 集団召喚されたようです
気がついたのは俺が一番だったようだ。俺は体を起こしてキョロキョロした。クラスメイト達がみんな気を失っているようだ。そして、すぐ側に倒れて気を失っている三那さん。俺は三那さんを起こそうとその体に触れ、軽く揺すった。
「三那さん、大丈夫? 起きれるかな?」
そう声をかけながら軽く揺すると三那さんも目を覚した。
「う、うーん、もう少し寝かせて。って、えっ? 那三くん!?」
少し寝惚けてる様子の三那さんが可愛くて俺はニヤニヤしてしまった。
「ヤダ、今の聞こえた?」
少し顔を赤くしながらそう言う三那さん。俺は頷きながら
「うん、聞こえた。可愛かったよ」
と答えると
「恥ずかしい〜……」
と三那さんが更に顔を赤くした。俺はもうこの可愛い女性を抱き締めたい衝動に駆られたけれども、何とか我慢して、現状認識に努める事にする。
「みんな気を失っているようだけど、三那さんは何か気がついた事はある?」
俺がそう聞いてみたら即座に回答が返ってきた。
「コレって集団転移だよね」
やっぱり三那さんもそう思ったようだ。俺もそう思っていたので頷いて肯定を表す。
「でもこの部屋には私達しか居ないみたいだけど…… アレかな? 場所を間違えたとかかな?」
ラノベを読みまくっている俺と三那さんが、色々な意見を交していたら、他のみんなも続々と気が付き始めた。
「むっ、ここは何処だ?」
「うわー、何で男子が私の股の間に倒れてるのよ! このっ、このっ、アッチに行きなさいよっ!」
「うわっ、痛ぇー。蹴るなよ!」
開いた扉から入ってきたのは鎧を着た人が五人。その後に豪華なドレスを着た俺達と同い年ぐらいに見える女性。そして、その後ろからローブと杖を持った人が三人だった。
クラスメイト達もその人達に気がついて、静かになる。
そして静かになった中、話し始める女性。
「皆様、ようこそカイール王国へ。
そう言って頭を下げたセラム王女。俺と三那さんは少しの違和感を覚えていた。こんな事を言われていつもなら真っ先に反論する委員長が、熱狂的な眼差しでセラム王女を見ている。他のクラスメイト達も何を言うでもなく頷いている。
何でだ? しかし俺と三那さんがその疑問を解決する前にセラム王女の言葉が続いた。
「異世界よりお喚びした皆様には特別な力が
その言葉に最前列に居た委員長を先頭にみんなが並び始めた。俺は三那さんに頷いて、先に三那さん、最後尾に俺が並んだ。
次々に魔水晶とやらに手を当てていくクラスメイト達。一番最初の委員長はどうやら凄い職能を授かったらしく、セラム王女の右横に立っている。更には野球部で活躍している男子もセラム王女の左横に立たされた。他の男子やそれに女子にまで羨望の眼差しを受けながら。
そして、三那さんの番になった。
「まあ、何ですの! 職能が【家事見習い】でスキルが【野宿】って! グーラム、貴方は何か知っていて?」
セラム王女が後ろに控えているローブを着た男性に聞く。
「はい、姫様。職能【家事見習い】は庶民がなる職能で御座います。戦闘や支援にもならない職能ですな。それと、スキル【野宿】でございますが、自分自身が野宿した際に、地面に寝ても良く眠れるというスキルで御座います」
と、その男性はセラム王女に説明した。説明を聞いた王女は三那さんに向かって
「まあ、残念ですわ。貴女では
と、クラスメイト達の更に後方を指差して言った。俺は下がる三那さんに軽く頷いて安心させた。
そして、俺の番になった。魔水晶に手を当てて出た職能とスキルは
「まあ、貴方もナンですの? 職能が【
「はて?
そうグーラムが答えた後に委員長が喋りだした。
「王女様、発言をお許し下さい。【
ここぞとばかりに俺を追い落とす発言をする委員長。コイツは三那さんを色眼鏡で見ていたから、三那さんと付合いだした俺を密かに目の仇にしていたのを俺は知っていた。更に中学時代に三那さんをイジメていた事も、違う高校に行ったオンライン仲間で、三那さんと同じ中学だった奴に聞いていた。
それでも俺は反論せずにいた。何故ならこのままなら、三那さんと同じ場所に行けと言われる筈だからだ。俺は三那さんを護る為に、何も言わずにいたら王女が俺に聞いてきた。
「貴方、スキルの発動は出来ますの? 聞いた事の無いスキルなので、出来るのならば見せていただきたいですわ。スキルの発動の仕方は頭の中でそのスキルを思い浮かべれば出て来る筈ですわ」
そう言われ俺は頭の中でスキルを思い浮かべた。そして、発動条件も仕方も分かったが、王女に向かっては
「ダメです。何も出て来ませんでした」
とウソを吐いた。
「まあ、残念ですわ。貴方も
そう言われた俺は三那さんの側に行った。ホッとした顔をする三那さんを見て俺は頷いた。
「それでは、皆様。皆様の素晴らしいお力を
そう聞いた王女の言葉に異論を唱える者は一人も居なかった。まあ、そうだろうな。元々クラスでもハブられた状態だったしな。デブのオタクと地味メガネ女子として。
「異論は無いようですので、お二人には幾ばくかの金銭を与えて、この王都から出ていっていただきます。ガイン、そのように手配なさい」
「ハッ、姫様の仰せの通りに!」
ガインと呼ばれた鎧を着た人がそう返事をしたら、王女はクラスメイト達を連れて部屋を出ていった。そして、俺と三那さんはガインに連れられて、馬車に乗せられ、馬車の中で一人金貨三枚を与えられて、城壁の外に出された。ご丁寧に城壁が見えなくなる位置にまで連れて来られて、
「この道を真っ直ぐ進めば、辺境の村がある。先ずはソコを目指すのだな」
と言われ馬車を降ろされた。さて、コレからどうしようか。俺は三那さんを護る為に色々と検証する必要があると考えていた。
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