役立たずと言われた技能【強】を極めたら最愛の人を護れました

しょうわな人

第1話 彼女が出来ました。

 俺の名前は旦 那三だん なぞう。現在は高校二年生で十七歳になる。学年でも有名な陰キャで、友人と呼べる者は誰も居ない。


 そんな俺だけど、何と彼女が出来ました。俺の彼女になってくれた素晴らしい女子の名前は奥 三那おく みなさんで、伊達眼鏡でその美貌を隠している可愛らしい女子だ。


 出会いは町中の本屋さんだ。二年生で同じクラスになった時には俺も人に言えたもんじゃないが、名前が変わった子だなという認識だった。


 町の本屋さんに注文していたラノベを受取に行ったら、三那みなさんも同じラノベを注文していて、同じ日の同じ時間に受取に来ていたのだ。

 その日はお互いに同じラノベを読んでいる同士で話が盛り上がり、更にはお互いの名前が漢字をひっくり返すと同じだねなんて言って、それ以降、親密度が高まっていった。そして、俺は意を決して三那さんに告白をした。


「あ、あの、三那さん。こうして親しくしてくれて本当に毎日が楽しいです。で、ですね、あの、もし、良かったら、俺と付き合ってくれたら、何て……」


 締まらない俺の告白に三那さんは


「あの、私、中学の頃にイジメられたりしてた陰キャだけど、その、私で良かったら……」


 とオーケーしてくれたんだ。それからは毎日学校に行くのが本当に楽しくて、お互いに好きなラノベの話を、クラスの他の奴らをそっちのけで休み時間の度に話していた。まあ、元々二人ともクラスの奴らとは馴染んでなかったのだが。

 そんな俺達二人が付き合っているのを知った奴らは、名前から俺達二人を旦那さん、奥さんとアダ名を付けてヒソヒソと陰口をたたいているのも知っていたけど、俺達二人は気にする事はなかった。


 俺は今でこそ陰キャだが、中学二年生までは陽キャだった。ある事がキッカケで今の状態になったのだが、三那さんはその出来事を知っていた。

 アレは町のデパートでの事だった。デパート内の文房具店でノートと筆記用具を買いに来ていた俺は、五歳ぐらいの女の子が一人で泣いていたのを見つけて、放っておけないと思い声をかけた。聞けば母親と一緒に来ていたが、はぐれてしまったという。俺は女の子に、


「それじゃ、兄ちゃんがお母さんに会えるようにしてあげるよ。一緒に付いてきて」


 と言って、はぐれたら大変だから手を繋ごうな。とも声をかけて総合案内所に向かった。総合案内所まで後十メートルという所で、女の子の母親が俺達を見つけた。そこで、その母親から浴びせられた罵声が、


「この、ロリコン!! 家のから手を離しなさい!!」


 だった。俺はビックリしてしまった。そんなつもりはサラサラなくて、総合案内所まで連れて行って迷子放送をしてもらうつもりだったのだが、母親からそんな言葉を言われるとは……

 フリーズしてる俺の手から女の子の手を強引に奪い、母親は近くにいた警備員に更に言う。


「この子が家のをさらおうとしてました。捕まえて下さい!」


 それからが大変だった。俺は詰所に連れていかれ、親にも連絡された。けれども、最終的には女の子の言葉によって誤解が解けたのだが、時すでに遅しで、医院を経営している父親からは


「そんな誤解を受けるなんて、恥を知れ!」


 と罵られ、どこかで見ていた同級の奴らからはロリコンとイジメられるようになった俺は、陰キャへと変貌していったのだ。学校には行くが殆ど授業を聞いておらず、自分の殻に閉じこもっていた。それでも、自宅で自主学習をしていたので、成績が落ちる事は無かったけど。


 それから、ラノベを良く読むようになった。異世界転生や転移の物語が好きで、小遣いの大半をラノベ購入にあてていた。

 そして、周りからもオタクの陰キャと言われるようになり、俺も敢えてそれを演じるようにして益々孤立出来るようになった。俺はあれ以来、人と付合うのが非常に怖くなっていたのだ。


 そうなってからも、密かに体を鍛えてたのだが、それを隠す為にワザと大サイズの服を着て、腹回りには座布団を巻いて太ったように見せかけて、体育及び水泳なんかは俺を信じてくれた母親(医師)に頼んで診断書を書いてもらい、免除してもらっていた。


 三那さんはその出来事を知っていたにも関わらず、俺と実際に話をしてみて、俺自身を信用できる人だと判断して、また、俺の口から真実を聞いて信じてくれた。


 そんな三那さんが中学の頃にイジメられた理由を俺に話してくれた。それは本当に三那さんは一つも悪くなく、クソみたいな理由でクラスの奴らにイジメられていた。俺は校区が違っていたから違う中学だったのだが、何人かのイジメをしていた奴らはこの高校にも来ていて、同じクラスにも一人居るそうだ。誰かとは教えてくれなかったけど、今では完全に関わって来ないから大丈夫だよと笑って言う三那さん。俺は何があってもこの子を護ると心に誓った。


 そんなある日の朝だった。朝礼を終え、担任が教室を出た途端に教室が光り輝くと俺達は意識を失った。

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