第33話 元の世界への戻り方 その1
「星華!星華!」
「星華ちゃん!」
どれだけ探しても星華はいなかった。
地震があって怪我をするのはあり得る。だけど、地震があって存在が消えるなんて聞いた事がない。
不穏な空気のまま美波達はお屋敷へと帰った。
お屋敷は美波の指導のもと地震対策がしっかりされていたためほとんど被害はなかったらしい。怪我人もいないそうだ。
その事を聞いて美波はほっとした。
美波の部屋と星華の部屋は男性である自分達が入っていいのか分からなかったのでどうなってるのか分かりません。とノーラルに言われて美波は2人分の部屋の被害を確かめる。
美波の部屋は無事だ。机の上に置いていた小物が倒れていたぐらい。
星華の部屋は……無事だ。
無事、無事だけど気になるものが机の上に置いてあった。
普段あまり本を読まない星華の机には大量に本が積まれていたのだ。
いくら親友とはいえ、人の領域を勝手に触っちゃだめだと理性が言っている。
理性と戦って本能が勝った。
積まれた本の横にあるノートに手を伸ばす。
題の無いノートをパラパラとめくる。
さらさらと流し読みながらあるページで手が止まる。
……なにこれ。
『転生の条件(多分)
その1 どちらかかどっちもかが交通事故で死ぬこと。
その2 違う世界に同じ名前の人がいる事。(でも私は誰かと入れ替わったわけじゃないから本当のことは分からない)
その3 誰かから強く生きてほしいと思われること』
『って事で一回死んでみようと思う。でも自殺では無理そうだからなんか良い方法ないかな?』
ドクンと心臓が嫌な音を立てる。
じゃあ、星華は死んだってこと?
確かに星華は割れた窓ガラスの1番近くにいた気がしなくもない。
でも、姿がなくなったってことは無事に元の世界に戻れたのかもしれない。
とりあえず、みんなに知らせないと。
美波はノートを抱えて部屋を飛び出した。
「……そうか」
ナノ様達の感想はたったそれだけだった。
アーロは心なしか落ち込んでいるように見えるが。
「星華さんの考えが正しいなら、事故で死ねば元に戻れるってことですよね?」
「そうですね。星華の予想が正しいなら」
ラフィーの問いに美波は答える。
「で、美波様はどうされるんですか?」
セシルの言葉は美波が見ないフリをし続けたことだ。
元に戻るのか、ここに居続けるのか……
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