第31話 パーティー その2
扉を開けた先には何人もの騎士に囲まれた皇子様が立っていた。
初めて皇子様を見た美波でも分かる圧倒的な存在感に思わず美波は息を呑んだ。
その場にいる全ての人が頭を下げたのに気づき美波も急いで頭を下げる。
徐々に足音が近づいたかと思うと
「久しぶりだな。ナノ、元気そうで」
と声が聞こえた。
初めて生で聞いたはずの皇子様の声は何故か美波は懐かしさを抱かせた。
「皇子様も元気そうでなによりです」
平然と返すナノ様。
え?
皇子様とナノ様ってそんな親しげな仲だったんですか?
「ミナミ嬢、このたびはご婚約おめでとう」
突然、自分の名前が呼ばれた気がしてハッと顔を上げた。
……今、私に言ったよね?
返事していいのか悪いのかよく分からない美波は丁寧にお辞儀する。
ふわっと皇子様が微笑まれて場の雰囲気が明るくなる。
「皆も楽にして、ダンスの続きを続けてくれ」
皇子様の一言で止まっていた音楽が流れ出しダンスが始まる。
なのに、皇子様はここから離れなかった。
不思議に思ったのは美波だけでなく星華もらしい。
「ナノ様と皇子様は幼なじみなんだよ」
小さい声でアーロが教えてくれた。
確かに初対面の時も「皇子様に言われて結婚しただけ」だと言っていた。
親しげに話すナノ様と皇子様はなかなか絵になる。
スマホがあるなら思わず連写しているレベルだ。
「どうだ、ナノは?」
突然話が振られ美波は驚く。
「は、はい。良くしてくださってます。私の話もよく聞いてくださって、その上、聞くだけじゃなくて実践もしてくださるので私、嬉しくって……」
「美波、それぐらいにしてくれる?」
驚きながらもここぞとばかりに自分の喜びを語った美波を少し頬を赤らめたナノ様が止めた。
「ハハハッ。やっぱり、恋はいいなぁ。私もしてみたい」
「あなたはできませんもんね」
「お前にミナミ嬢を紹介したのは私だそ。もう少し感謝の気持ちがあっても良いだろう」
「そうですね。ありがとうございます」
「気持ちがこもってないな」
敬語こそ使っているもののバッサリ皇子様の言葉を切り捨てることが出来ることから2人の仲の良さが感じられる。
イケメン2人のやりとりを見守っていると美波は異変に気づいた。
……地面が揺れてる?
反射的に顔を上げると少しシャンデリアが揺れている。
危ない!
美波がそう思った瞬間、美波が今までで一度も経験したことがないような大きな揺れが王都を襲った。
多分、いや、絶対、大地震だ。
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