第30話 パーティー その1
うわぁ、これがパーティー。
美波は深い緑の振り袖を着て、パーティー会場へとやって来た。
周りにいる女性たちはみんな華やかで目を引く鮮やかなドレスを着ていた。
予想通り和装の美波一向は目立つ。
ナノはもちろんお供の星華、ラフィー、セシル、アーロも美波に合わせて和服を着てくれたのだ。
「やっぱりナノ様カッコいい…」
「今日なんで和装なんだろ?」
「似合ってるからいいじゃん」
令嬢達の熱い視線がナノへと降り注がれる。
背の低い美波を囲むようにしてみんなが立ってくれているので美波の存在にはまだ気づかれていないらしい。
女性たちがナノに近寄ってくるなら威嚇でもしようかと身構えていた美波だが、噂話が聞こえるだけで直接話しかけてくる女性はおらず近寄ってくるのはおじいさまぐらいの年齢層の方々だけだった。
やがて音楽が鳴りだすと若い男女が踊りだす。
周りを見渡してみると、跪き意中の女性をダンスに誘う男性やなかなか誘いたくても勇気が出ない様子の女性がそこら中にいる。
「星華、星華が読んでた小説もこんな感じだった?」
パーティー会場に着いてから静かにテンションを上げてる星華に聞く。
美波がパーティーに行きたいと申し出たのは昔星華が人生で一度でいいから貴族のパーティーに行ってみたいと言っていたからなのだ。
「うん。想像通り」
親友が嬉しそうにしているのを見て美波はナノにお願いしてみて良かったなと思った。
「楽しいか?」
美波を隠すようにおじいさま方とお話ししていたナノが突然声をかけてきた。
「はい。思ってた数倍楽し
「騎士団長様、良かったら私と踊っていただけませんか?」
美波の声を遮るように声をかけて来たのは美波と同い年ぐらいの可愛いというより美人という言葉が似合う令嬢だった。
「あの子、声かけたわよ」
「とんだ命知らずね」
噂声が聞こえる。令嬢達の目線が再び強くなる。
「婚約者が出来たので」
ナノは美波を抱き寄せそう宣言した。
空気が変わった。
「……」
「きゃー」
「えっ、あんな子と?」
「信じられない」
一瞬沈黙が漂い、すぐに悲鳴に包まれた。
あれだ。
学校で1番のイケメンと付き合った時に受ける視線。抜け駆けしてんじゃないよの視線。
うん、それにとても似ている。
居た堪れない……。
美波が少し俯くとナノが抱き寄せる力を強める。
ざわざわした空気の中、突然前の扉が開いた。
扉からひとりの人物が出てきた途端、さっきとは違う空気の変わりを美波は肌で感じた。
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