第29話 お買い物 その2
店員さんが決まったと言ってから待つこと10分ぐらいだろうか。
デザイン画を描き上げたらしい店員さんが期待に満ちた表情でデザイン画を渡してきた。
「……これって、振り袖ですか?」
深い緑で落ち着いてその上、華やかな花柄の美波の趣味ドストライクなデザイン。
ドレスかと思っていたので和風の着物のデザインを見たとき少し驚いてしまった。
「って、私、ダメですね。ピッタリだなって思ったけど依頼を受けてるのはドレスですし。振り袖なんて踊れませんもんね。すみません、考え直します」
「いえ、これが良いです。これ着てみたいです」
どうせ、ドレスを着たところでダンスは踊れない。
「でも、ドレスじゃなかったらミナミ様はともかく団長様の名に傷は付きませんか?大丈夫でしょうか?」
星華が遠慮がちに言った言葉で我に返った。
そうだ。ここは日本じゃない。自分の着たいものをそのまま着れる世界ではないのだ。
「すみません、やっぱりドレ
「分かりました。ドレス画も描きます。パーティまでは後2週間ですよね?衣装は3日あればなんとかなります。一度シュタール様とお話合いの上、後日またご来店いただけませんか?」
その後、店員さんはドレス画も描いてくれた。
こちらは薄い青色で雪の結晶をモチーフにした綺麗なデザインだった。
こちらも魅力的だがやっぱり振り袖の方が美波は気に入ったので一旦持ち帰りということになった。
♦︎
「……って感じで振り袖が着たいんだけどやっぱり駄目かな?」
ナノの腕の中で美波は問いかけた。
あの日以来美波は寝る前ナノの寝室に行き2人で色々な話をするのが日課になっている。
ナノのベットに座って、ナノに抱きしめられながら話をする、それ以外もそれ以下もない。
ちなみにこの時間でのナノとの話し合いのおかげでこの家の防災対策は結構万全になった。
家具は固定したし、窓には飛び散りを防止するシートを貼った。
「確かに、振り袖を着ている令嬢は見たことないな。……でも見てみたい。うん、いいよ、振り袖で。もしなんか言われたら俺の趣味とか言えば良いだろ」
「え?いいの?」
案外あっさり許可が降りた。
「踊れない口実にもなるしな。あと、俺も美波の和装姿見てみたい」
意外とこの人私に甘いのかもしれない。とか調子に乗っていた美波は想像していなかった。
パーティーであんなことが起こるなんて。
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