第28話 お買い物 その1

「うっわぁー!都会だ」


「ちょっと星華うるさい。そんな反応してたら田舎者感丸出しじゃん……」


星華のはしゃいだ声に呆れた様子の美波だが内心は星華と同様かなり興奮している。


美波達は今日、王都にやってきた。


反対される覚悟でこの前の夜ナノに頼んだ『パーティーに行ってみたい』という希望が案外あっさり許可されたのだ。


ということで再来週にあるパーティーのドレスを買いに王都に来たというわけである。


「星華ちゃん達が住んでたところはこんな感じじゃなかったの?」


「私が住んでたところはまあまあ田舎だったから。あっ、でもテレビで見る東京はこんな感じでした」


お供として付いてきたアーロの問いに星華が答えた。


……私達が本当転生のことを話してから2人の仲が縮まって見えるのは気のせいだろうか。


なんだかいたたまれなくなり美波は目的のお店へと少し歩くスピードを上げた。


♦︎


西洋風のおしゃれな建物。


ここが、目的地の服屋さん。


上級貴族御用達の有名ブランド、らしい。


「シュタール様ですね。お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」


さすが、有名ブランド。店員さんも超美人。


「じゃあ、美波ちゃん、星華ちゃんゆっくり決めてねー。俺はここらへんお散歩してくるから」


アーロが外へ出て行くと美波達は店の中へと通される。


色とりどりのドレスが並ぶ店内は見ているだけでテンションが上がる。


「シュタール様からはお値段は気にせず、お好きなものを、とお伺いしております。何か理想とかありませんか?」


目をキラキラさせて聞いてくれる店員さんには悪いが美波は防災一筋であいにくドレスには詳しくない。


「あの、私、ドレスのことはよく分からないんですけど、私に似合うものが良いです。お任せしても良いですか?」


せっかくドレスを着るならナノに「可愛い」までとは言わなくても「似合う」ぐらい言って欲しい。


「そうですね、シュタール様のお隣に並ばれることを考えると、落ち着いたお色の方が良いかな、でも、逆に深いカラーの方が良い?うーん……」


結構真剣に考えてくれているところ悪いが大切な事を言い忘れたことを思い出して口を開く。


「肌の露出は少なくしてください」


治ってきたもののまだ身体の傷が完治した訳ではない。出来るだけ隠しておきたいのが乙女心。


しばらく考え込んだ店員さんは思い付いたように叫んだ。


「決まりました!ミナミ様のドレス!」


____


28話にして初めてナノ様の名字を出せました。


ナノ様のフルネームはシュタール・ナノっていうらしいですよ……。


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