第27話 秘密の恋バナ 星華side
「恩人?」
ラフィーに聞き返された時、本当は言いたくなかった。美波と星華の2人だけの秘密にしておきたかった。
でも、美波が馬鹿にされるのは耐えきれない。
星華はゆっくりと口を開いた。
星華と美波は小さい時からずっと一緒だった。
だけど、小学校の頃からたった一度も同じクラスになったことはなかった。だから学校では廊下で会ったら手を振る程度の接触だった。
中学1年の頃、星華のクラスではいじめが流行った。最初にターゲットにされたのは当時星華の隣の席の男の子だった。
陰口から始まり、教科書が破られたり、とドンドンいじめはエスカレートしていく。
ある日、花瓶の水を男の子がかけられた時、星華の心の声が溢れた。
「だっさ」
放課後だったのでいじめの連中しか教室にいないなかで、星華はぼそっと呟いた。
言ってしまってから慌てて口を塞いだけど、遅かった。星華の呟きははっきり向こうに聞こえていたようだ。
教室の空気が冷えていく。
次の日からもういつもの日常はなかった。
机の落書き、上靴は捨てられ、友達には無視さる。
一度、美波に相談しようかとも思ったが謎のプライドが邪魔をして結局しなかった。
そのまま1学期の終業式を迎えた。
長い長い校長先生の後、部活表彰が行われた。
「津沢美波」
突然、美波の名が呼ばれ美波が壇上に上がった。美波の表彰は作文のコンクールだったらしい。
美波は壇上で表彰状を受け取ると先生からマイクをかりた。
「坂口、西尾、長石、……だっさっ!」
全校生徒の前で美波は叫んだ。
坂口、西尾、長石はいじめの主犯。
星華の場合は教室で漏れてしまったのだけど美波は自分の意思で全校生徒の前で言い放った。
言い返したらどうなるのか星華を見て分かっているから誰も反論なんてしてくれなかった。のに、美波は言ってくれた。
この時から美波は星華にとってヒーローだった。
「……分かってもらえましたか?皆さんにとって団長様が凄い大切な存在であるのと同じように私にとって美波は1番大切な存在なんです。……らっラフィーさん!?」
話し終え、意識をこちらに向けるとラフィーが泣いていた。
「いや、大変だったんだな。嫌なこと思い出させて悪かった」
「ごめんねぇ。星華ちゃん。ラフィーちゃんこう見えて涙もろいの」
アーロがラフィーの背中をさすっている。
さてさて、
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