第24話 ナノの過去

トントントン。


午後7時。


美波は緊張しながらドアをノックした。


「入れ」


声がしてそぉっと美波はドアを開ける。


え……?ここ寝室?


ラフィーにここまで案内してもらったから場所は間違っていないはず。


いや、ここにナノがいるのが正しいという1番の証明だ。


「ここに座れ」


と言ってベット、ではなく椅子を指差した。


「あ、あの、お話って?」


美波はいたたまれなくなって早速本題を問いかける。


美波は、彼氏いない歴=年齢。もちろん男性とふたりっきりの部屋でおしゃべりという経験も皆無だ。


「これからの事について話そうと思ってな」


離婚とか言われる?それとも、働け!とか言われるのかな?


「そんな、怖い顔しなくていい。昼は美波達について聞かせてもらったから、俺の話も聞いてほしい。そうじゃないとフェアじゃないだろ?」


美波の心の声を読んだようなナノに少し驚きながらも美波は先を促した。


「俺が騎士団長になった経緯は知ってるか?当時の王宮騎士団を俺が裏切った話」


「ノーラルに少しききました。被害の多い地域をナノ様が優先した結果、騎士団を裏切る事になってしまったと。でもそのおかげでたくさんの人が助かったと」


美波は失礼のないよう出来るだけ言葉を選んだ。


「あぁ。でもそれだけでは『王宮騎士団長』にはなれない。俺には王家の血が流れているんだ。俺の叔母は王妃。つまりは、半分は実力だけど半分はコネで団長になったんだ。だから、俺に負の感情を持つ奴も少なくない」


「やめてください!」


美波は聞いていられなくなってナノの手を握りしめた。


コネなんて言わないで……。


男性特有のゴツゴツした手には剣だこが出来ている。ナノが努力した結果だ。


ナノがどれだけ努力したのか、どれだけの苦悩や苦労したのか美波には分からないけど、その日々をコネという言葉で片付けて欲しくなかった。


「……だから、俺と結婚するってことは危険も伴う。団員なら自分の身は自分で守れるが女の身ではそうもいかないだろう。実際、俺の妹は争いに巻き込まれて死んだ。自分のことは後回しで周りのことを最優先に考える良い子だったのに」


「そうですか。……それからずっとご自分を責めて来たんですね。初日、私たちが初めて会った日、私を突き放したのはそれが理由ですか?」


美波はずっと引っかかっていたのだ。ノーラルから色々な話を聞けば聞くほどナノは冷酷な人ではないように思ってしまったから。


「あぁ、それでも俺と結婚続けてくれますか?」

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