第22話 拷問 その2

「アーロ、ラフィー、剣をしまえ」


重い沈黙を破ったのはナノだった。


「しかし、罪人を裁くのも大切な役目」


「怯えてるではないか。それでは話すに話せまい。それに何かあってもお前らなら剣はいらんだろ」


渋々といったように2人は剣をなおす。


「アーロが言うことは本当か?」


静かに問うたナノは偽りは許さないというオーラを放っていた。


「……最後まで聞いてくれますか?」


美波は口を開いた。


自分達は地球という世界の日本っていう国に住んでいたこと。そこで交通事故に遭ってこの世界のハニール・ミナミに転生したこと。


「ハッハッハァ!いや、嘘つくならもっとマシなのにしてよぉ。転生?ありえない」


「確かに信用出来る要素はゼロですね」


アーロの笑い声の後、セシルの真面目な声がしんどい。


「本当の名は?転生前の本物の名は?」


「「「信じるんですか!?」」」


「……津沢美波。星華は加地星華」


美波は躊躇いながらも本来の名を呟いた。


久しぶりに言った。本当の名。なんだか心が温まるようなそんな気分だった。


おかしいな、もしかしたらもう殺されるかもしれないのに。


涙が溢れてくる。


転生してからずっと気を張ってた。


正体がバレないように、追い出されないように……無事に2人で星華と元の世界に戻れるように。


突然身体が暖かいなにかに包まれた。


「知らない世界でたった2人でよく頑張ったな」


頭上から聞こえてきた声に抱きしめられているのだと理解して体温の上昇を感じる。


「えっ?ナノ様?」


「マジですか?」


後ろのギャラリーの声でナノは身体を離した。


「アーロ、ラフィー、美波と星華に謝れ」


「え?あの話、ナノ様マジで信じるんですか?」


「俺は嘘か本当かは人の目を見たら分かる。美波の話は本当だ」


……特殊能力かなんかですか。


これから嘘つけないじゃないですか。


信じてもらえて良かったですけど!


「「……すみません」」


「いえっ。私も信じにくい話してすみません。あっ、あの……確かにアーロさんがおっしゃった通り炭酸カリウムは人にかかったら有毒です」


「「「「は?」」」」


みんな揃って同じ反応。


少し覚悟していたけど、さっきアーロに言われた時から言いたかったのだ。ここは勇気を出して訂正しないと!


「炭酸カリウムの作用により油脂はケン化反応を起こします。このケン化反応により油脂の表面は不燃焼性の石鹸様の物質に変化し、これが未反応の油脂を空気から遮断するとともに油脂の温度を低下させます。つまり厨房での火事に大変効果的なのです!」


……あれ?伝わらなかった?


目が点になってるみんなを見て美波は首を傾げた。


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