第19話 ナノside

時は少し遡る。


「ナノ様は素晴らしいお方。貴方様のそばにいられるだけであの令嬢は飛んだ幸せ者。そんなに落ち込まないでくださいませ」


王宮からの帰りの馬車。


セシルでなんやら言っているがそんなのではナノの気分は晴れない。


あのぐらいの年の令嬢といえば媚び売ってくるか、物をねだるとか、そういうことしかナノはされたことがない。


物もねだらない、しかも媚び売るどころか正々堂々の「好きにならせます」発言をするミナミは異質の令嬢だった。


面白いと思った。


まさか、虐められていたとは。


馬車が止まってナノは馬車から降りた。


「おいっ。セシル。何があった?」


屋敷から煙が上がっていた。


「団長様ー。火事が起きました!火元は厨房です!団員達により、鎮火しましたのでご安心ください」


食事担当をすることが多いノーラルが走りながら報告してくる。


「怪我人は?」


「火元には3人いましたが奥様の声かけのおかげで怪我人ゼロです」


『奥様のおかげ』か……。


俺の大切な団員達を助けてくれたミナミに俺は何が出来るのだろうか。


「すぐ行く」


ナノはそう返事してセシルを連れ食堂へ急いだ。


♦︎


「お待ちしておりました。王宮騎士団長様」


ナノはセシルとラフィーを伴ってハニールミナミの実家を訪れた。


火事の後、ナノはラフィーに依頼していたミナミの調査を自ら行った。


調査結果は皇子の言う通りだった。


ナノ達はハニール家で最も広いであろう部屋に通される。


真ん中に置かれた椅子に偉そうに座っているのは現ハニール家当主の娘ハニール・マナミだろう。


「すみませんね。お父様もお母様も現在留守でして……。要件なら私がお伺い致しましょう」


なんか腹立たしいが、一応相手は公爵令嬢。騎士団長の自分とあまり身分は変わらない。


「単刀直入にいう。今までの行いをミナミに謝罪しろ。そうしなければ皇子になんでも言ってやる」


今はまだミナミへの行いしか調べてないがこの家は調べれば他にも色々出てきそうだと直感がいっている。


問題が明らかになれば国王から爵位を取られるのは確実だ。


「……お父様とお母様に相談致します。ご返信お待ちいただけませんか?」


「分かった。長くは待てないからな」


そう言い捨て部屋を出たナノに続きセシルも部屋を出た。ラフィーも続こうとしてやっぱり足を止めてマナミを振り返った。



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