第17話 火事
「ミナミ!」
咳込みながら呼ばれた声に美波はハッと目を開けた。
気付くと団員達により消火は終わっていて息をついた。
「怪我はみんなないか?」
ノーラルがみんなに聞いている。
どうやら現場にいた団員タマラとカタアも無事だったようだ。
「俺、副団長のとこ行って報告してくるわ」
ノーラルがA棟へと走っていくのを見届けたら声をかけられる。
「奥様ですよね。俺、中にいたタマラって言うんですけど。……ありがとうございます!俺ら奥様の声かけがなかったら死ぬところでした!マジで命の恩人です」
隣にいるカタアも頷いている。
「本当にありがとうございます。奥様は災害対策に詳しいんですか?」
「そうなんですっ。ミナミ様は『防災』が大好きでこうやってみんなを救ってるんです。そんな
あんなに呆れていたのに何故か星華が得意げにしている。
「ミナミ!大丈夫か!?」
消火を終えやっとみんなが落ち着きを取り戻したところでナノが走ってやって来た。
「遅れてすまない。ちょっと外に出てて帰ってきたら火事に巻き込まれたって報告があって……」
「……すみませんっ!私、お仕事のご迷惑はかけないと言ったのに早速ご迷惑おかけして……」
美波がしょぼんとしているとタマラがフォローしてくれた。
「そんな、奥様のせいじゃありません。なんなら奥様は俺たちを助けてくれたヒーローです。ご迷惑かけたのは俺です。団長様すみません」
「お前たち誰も怪我してないなら良かった。ミナミ、こいつらを助けてくれてありがとう。お前らもいつも飯の準備助かってる。今日は休んでいい。明日からまたよろしくな」
ナノの言葉にカタアとタマラが「はい!」と揃って返事をする。
……ナノ様って意外と良い人?
……もしかして早速私のこと好きになってくれた?何が原因か分からんけど。
「あっ、あの、ナノ様、消化器あった方が良いと思いますよ」
美波はご迷惑承知で提案した。
日本なら大抵どこにでもある消化器。この家にないのが気になったからだ。
「消化器?なんだそれ?作れるのか?」
……ですよね。
『防災』がないのに『消化器』があるわけないですよね。
「作れ……ないことは無さそうですけどやめといた方が無難ですね。はい。すみません。忘れてください」
「実家にはあったんだろう。主成分はなんだ?」
ハニール家にはあったのだろうか。甚だ疑問だがここは気にしない。
「消火器も色々あるんですけど。ここに置くなら強化液消火器。主成分は炭酸カリウムです」
ナノは少し考えてから「検討しておこう」と呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます