第16話 厨房にて その2

「団長様は思いやりがあって強くてかっこよくて僕の憧れのお人です!僕たちに人の行動を意味もなく制限するようなことを言う人では決してありません!!」


勢いよく言い切ったからか、ノーラルは息切れしている。


「そっか、ごめんね」


「い、いえ、こちらこそすみません。お言葉ですが奥様は団長様のこと、嫁ぐ前に調べなかったのですか?」


「急にご当主様お父さんに言われたからね。良ければ団長様のこと教えてくれないかな?」


「もちろんです。僕で良ければ。奥様は8年前の国内反乱は詳しくご存知ですか?8年前、大きな地震が東南部を襲いました。しかし、王都は震源地からかなり離れていたので被害はほとんどありませんでした。ですので、東南部の被害を軽視した当時の王宮騎士団に反発して東南部の騎士団が立ち上がったのです……


ノーラルの話をまとめると、当時まだ王宮騎士団の団員だったナノは団長の命令を無視し、東南部に手を貸した。


団長の命令を無視してまで自分の正義を貫いたナノは東南部のヒーローとなり、そんな噂が王都まで届きついには王宮騎士団長にまでなったということだ。


……って感じで団長様は素晴らしい人です。今も団長様を慕ってる人も多く、そんな団長様の奥様になられたミナミ様を団員一同歓迎しております!」


ノーラルが団長様について熱く語ってるうちに野菜を2人とも切り終えた。


食事は64人分。しかも稽古でお腹が空いた団員達が食べる分なので、改めて見るとすごい量だ。


これを煮詰めるのかと思うとかなり時間がかかりそうだ。


「きゃー!」


突然星華と思われる声が響く。


隣の部屋で星華は2人の団員と料理に使う火を起こしているはず。(この世界なんとガスが通ってなく火を起こすのは手作業らしい)


美波とノーラルは急いで隣の部屋のドアを開ける。


うわっ。凄い煙だ。


「火事だ!?タマラ!カタア!セイカ様!」


ノーラルが慌てて火起こしをしていた3人を呼ぶ。


「危ないですから、かがんで出来るだけ体勢を低くして、壁に手をつきながらこっちまで来てください!!」


美波は出来る限り叫ぶ。


煙には上昇する性質があるので体勢は低く。壁に沿って歩くのは煙で視界が悪い中脱出するため。あと隅には新鮮な空気が残っている可能性が高いからだ。


ノーラルと美波が叫んでるうちに2人の叫び声を聞いた団員達が食堂に集まってきた。


「火事だー!」


「水をかけろ!」


団員達がバケツに水を汲んで消火しているのを見ながら美波はひたすら親友星華の無事を祈った。





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