第14話 ナノside

「結局、どんなアドバイスもらったんでーすかっ?」


「小娘によると屋根を急な三角形にしろとのことだ。今は平らだから積もった雪が落ちなくて重さで屋根が抜けるらしい」


意外と正しそうな意見ですねぇ。というアーロの言葉に少しムカついた。


「ミナミは正しいことしか言わないぞ」


ラフィーが驚いた顔をしている。


「……ナノ様が他人を庇うとは」


「おい、ラフィー、聞こえてるぞ」


「すみません」


即座に謝罪するラフィーを見てたらふと思い出した。


「ラフィー、ハニール家を調べてくれないか。気になることがあるんだ」


ナノはミナミが言いかけていたことが気になった。


ハニール家は確か、4人家族。父親も母親も妹も生きていたはずだ。災害によって大切な人を亡くしたとか、そういうことではないのかもしれない。


「ナノ様、そろそろ参りましょうか」


セシルの言葉にナノは椅子から腰を浮かせた。


♦︎


厳重に警備された煌びやかな廊下を進み、ナノとセシルは一室の前で足を止めた。


セシルがついてくるのはここまでだ。


ナノはひとりでドアを開ける。


「お久しぶりです。皇子様」


美しくお辞儀しながら口を開いた。


王宮騎士団長を務めるナノがここまで丁寧に接する相手はこの方、皇子様と国王、王妃ぐらい。


「よく来た。ナノ。そこに座れ」


あらめて部屋を見渡すとさすが王宮、全てが煌びやかで華やかだ。


「で、ハニール・ミナミはどうだ?」


おそらくそれが聞きたかったのだろう。


「変わった令嬢ですね」


ナノはミナミの趣味防災好きについて話した。


「はははっ。それはそれは愉快な令嬢だな。でも、噂となかなか違うな」


たとえ皇子だとしても所詮はひとりの男。普段なかなかできない恋バナは楽しいらしい。


「噂と違うとはどういうことでしょうか?」


「抑えめな性格だと聞いたぞ。家族に虐められていながら使用人には優しく接し、天使のような人だと。父親にも蔑ろにされていたからいい縁談にも恵まれなさそうだったから、お前に持っていったのだ。私欲の塊のような奴よりいいだろう」


ほっとけばいつまでも独り身でいそうだったからな。という皇子のからかいの言葉はもうナノには聞こえていなかった。


は?家族に愛されてなかった?人を守るために『防災』をやってるのに?


自分は愛されてこなかったのに人は守りたい。どんなお人好しだ。


……自分は初対面のミナミになんて言った?


『皇子の命令で結婚しただけ』


ここでもまた愛されないのか。とミナミは絶望したに違いない。


何やってんだ、俺。


……ナノは自己嫌悪と戦うことになった。

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