第7話 ナノside
「さすがにあれはないですよ。怯えてましたよ。可哀想ですよ。ミナミ様が。」
「いやいや、あんくらいがちょうど良いですって。あんな小娘なんかにナノ様を渡せるもんかって感じですよ!」
ハニール・ミナミが出て行った扉をナノは見つめながら、副団長の2人の言い合いを聞いていた。
ミナミを庇っているのが、ラフィー。ナノを庇っているのがセシル。副団長はもうひとりいるが今は不在だ。
ナノは王宮騎士団の団長を務めている。仕事が忙しく結婚は遠慮してきたがとうとう皇子が直接結婚話を持ってきたため断れず、結婚する運びとなった。
この結婚は所詮、戦略結婚。
相手を愛して結婚した訳でもなければ愛されて結婚したわけでもない。
ならば、仕事の邪魔はしないでほしいと思ったためなかなかきつい言い方をしてしまったのだが、怯えさせてしまったことはほんの少し反省している。
「確かに怯えさせたのは悪かったと思う。でも、変な期待はさせない方が良いと思ったのだ」
突然言い合いに入ってきたナノにラフィーは少し驚いていたがセシルは「その通りでございます!」と大きく頷いた。
「変な期待って…でも、ミナミ様なかなかの容姿をしていらっしゃったように感じますけど。大切な存在になる事はやっぱりあり得ないのですか?」
「……そうだな。もうあんな思いはしたくないからな。大切な存在はもう充分だ。」
がっかりした様子のラフィーを横目にナノは中断していた書類と向き合う。
「そういえば、北東部で今年は積雪がとても多かったようだな。」
「はい。報告によると作物もかなりダメになったようで生活も安定しない様子です。」
「家屋の崩壊も多く報告されています。」
打てば叩くように返答が返ってくる。
「陸騎士団を何班か北東部へ派遣しましょうか。3班ぐらいが良いですかね?」
「いや、8班回せ。今は幸い隣国との争いはないからな。人数は多い方がいいだろう」
「「了解しました。」」
カランカランカラン。
ベルが鳴った。ご飯の合図だ。
王宮騎士団ではみんな揃ってご飯を食べるというルールがある。(もちろん緊急時は別問題だが。)
「今日の夕飯はなんですかねぇ。」
ミナミが来たから団員の奴が気合い入れて作ったご馳走ではないかとナノは予想する。
「夕飯担当いつも4人なのに何故か今日8人でしたよ。」
やっぱり。
こうして3人は食堂に向かった。
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