第1章 「指きり、して」と彼女は言った。

彼女の独白


 わたしはたぶん、何者でもなかった。


 誰かに必要とされて、生まれてきたわけじゃない。

 ただの『あまりもの』。いるから、いるだけ。


 だけど、貴方が『わたし』をくれた。


 貴方がいたから、わたしはあの日、『家族』になれた。

 貴方がいたから、『戦友』になれた。そして、みんなの『希望』にも。


 いつも、貴方がわたしを何者かにしてくれた。

 だから――勝手に思い込んでいた。


 この先も、貴方がきっと、なりたいわたしにしてくれるって。

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