燕たちの戦い ⑥〈戦隊長の怒り〉
「第一中隊、突撃用意!」
炎と黒煙に
シュヴァルベ隊は連携によって奇襲攻撃を成功させ、航空優勢を確立しつつある。しかし、戦隊長である彼の内心は煮え
(——クソったれめ!)
勝利を目前にしているにも関わらず、
重戦闘機の正面、
空に黒煙の円弧を
分かっている事は、高度700mを切る低空である為、墜落まで7秒前後しか残されていない事。そして、パイロットは最期の瞬間まで脱出しなかった、という事実だけだった。
機体は雪原に墜落し、爆散。
「04、04、直ちに編隊に戻れ!」
悲しみに沈む
既に200m以上は離れていた。スロットルを全開にしているらしく、排気管から激しい
「ツバメ04、貴様まで死ぬ気か」
応答はない。しばし
《こちら04、無線機に不調を認む。これより交戦に入る。通信終リ》
と返答の後、ブツリと短い重音――クリック・ノイズが響く。
ふざけやがって。あいつ、
怒りに充血した目で遠ざかるツバメ04の後ろ姿を見た時、
進行方向に対する機体の向きが明らかにおかしい。真っ直ぐ飛んでいるように見えるが、機首が異常なほど左を向いている。
(そうか、そういう事か――)
針路を見誤らせるようなその動きに、ふと思い当たるモノがある。当然だった。彼女に空戦を叩き込んだのは、他ならぬ彼自身だからだ。
「――
冷えた初冬の空気を吸い込んだ液冷倒立V型12気筒エンジンが
「第一中隊、我に続け。ツバメ04が引き付ける間に、高度を稼ぐ」
各機から《了解》の返答を聞きながら、眼下を飛ぶ5機の重戦闘機編隊に真正面から突っ込んでいくツバメ04を睨みつけた。
じゃじゃ馬め、後で手荒く教育してやる。それまで絶対に死ぬんじゃねェぞ――。
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