第11話 「椎名鈴拉致」


〔私が大切にしていた鏡を落としたら女の子が拾っていってしまったのよ〕


それを聞いて、以前見せてもらった黒地にピンクの蝶が描いてある丸鏡を思い出した。


『拾った人はどんな人?』

〔ちょうど今はあなたのクラスにいる子よ〕


ランカが言ったことを考え、鈴が持ってるという結論にいたった。


『それたぶん私のターゲットだわ』

〔あら、それなら私は何をすればいいのかしら?〕

『鈴を拉致るのに逃げられると面倒だから、ドアと窓を開かないようにしてほしいんだ』

〔そんな簡単なことでいいの?〕

『うん、よろしくね』


そういって教室へ入る。


「誰…ですか?」


突然見覚えのない変装した紅が入って来たので吃驚したようだ。

何も言わずに近づくと何かを感じたのか、鈴は席へ立ち後ずさる。


「こっちに来ないで!」

『あははっっ』


緊張が頂点に達したのか少し強めに威嚇してきたことが面白くて思わず笑ってしまった。


「その声は紅?」

『ウケる。ごめんごめん』


いつも通り声をかけてキャップを取れば安心したようでホッとしていた。


「驚かさないでよ〜」

『んや、100%マジだよ』


ゴソゴソと鞄を漁り始めると、それが気になったらしくじっと見てくる。


「てか、なんでそんな怪しい格好してんの?」

『やらかす時ってバレないようにするのが鉄則じゃん?』

「やらかすの前提?!」

『これからやらかす予定』


鞄からスタンガンを取り出して鈴に向き直る。


「その…さ、なんでそんなの、持ってんの…」

『んー?これね…






        スタンガン』



青い顔をしてる鈴。

見る人が凍りつくような冷たい笑顔の紅。

不穏な空気を察して震え出す鈴に伝える。


『君を拉致るんだよ』


バチンッ!とスタンガンを鳴らしゆっくり近づく。


「やっ…うそ…だよね…」


すとんっと表情を無くし歩み寄ってくる紅にパニックを起こしかける。


「嫌!何これ!!なんで開かないの!!」


自分の身に危険が迫り教室を出ようとするが、力一杯ドアを開けようとするがドアはびくともしない。


『そのドアさぁ、キミが起きてる間は開かないんだよ』


バチバチバチッ!     ドサッ…


『んじゃ、運ぶk「うっ…」ん?』


気絶した鈴を運ぼうと腕を掴んだら呻き声が上がり、顔を覗き込むとまだギリギリ意識があるようだ。

もう一度スタンガンを使用したが、痙攣した後やっぱり気絶しない。

ぐすぐすと泣く鈴にこれ以上はちょっとまずいと思い、鞄からスプレーを出す。


「こん、ど…は、なに…す、んの、よ…」

『寝るだけだって』


髪を鷲掴み頭を固定して顔の前でスプレーを吹きかけると、少し抵抗した今度こそ完全に意識を手放した。


『ったく…』

〔紅は黒いねぇ〕

『ん?そんな焼けてる?』

〔サディストってことよ〕

『んなことないって』


何やらいろいろと言われているが、右から左に流しつつ探し物を見つけるために鈴の鞄を漁る。

大量の化粧品をよけながらポーチを一つずつ開けると、その中から目当てのものを見つけてランカに渡す。


〔ありがとう〕


床に散らかしたものはそのままに鈴を担いで立ち上がると


〔私も玄関までついていってあげる〕

『ありがとう、嬉しいよ〕


ランカがついて来てくれると申し出てくれた。

ニコニコとしている紅の姿を見て可愛いと思ったのはランカだけの秘密。







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