壁のシミ

野棘かな

第1話

 瑠美って誰なんだ?

最近、ふと頭に浮かんでくる。

わからない。

知らない名前だ。

一体誰なんだ。


 冷蔵庫をバタンと閉める。

ダダダと階段を駆け上がり部屋に入る。

着替えるのも面倒だ。

そのままベッドに潜り込む。


 寝返りばかり打っていた。

あれこれつまらないことが浮かび

ぼんやりと寝付けないまま

0時を過ぎた頃

「.瑠美」

「瑠美」

って

ふっと呼んでしまったら

引きこもりの部屋の壁から

「ここよ」

とか細い声がする?

「ここにいるわよ」

女の声だ?

壁の茶色いシミの中から聞こえてくる。


おお、そうだった。

記憶がフラッシュバックする。


 0時から1時の間に

名前を呼んではいけない。

どこにいても

黄泉の世界からも

返事する?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

壁のシミ 野棘かな @noibara

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ