第7話 カフェテリアの涙

もしもこの場所にいる誰かが

あの日の僕の事を知っているなら

どんな言葉をかけてくれるだろうか


悲しみは海より深く

嘆きは深海魚の喉奥に棘のように突き刺さり

どうしようもない程の苦しみに

存在していた孤独な僕へ


その時だった


どこかで見たような懐かしい微笑みが

僕の心の躓きを

包んでくれたのを今でも覚えている


そう、

それは母さん


今では記憶の中にしか生きていない

僕の母さん


皺だらけの顔をして

にこりと微笑してくれた


ああ、それだけで

どれ程、僕は救われたことか


やがて星になり僕の頭上に輝いた母さんへ

僕は心の底から感謝して言いたい


あなたから命を授かり

どれ程、

幸福だったか


やがて僕も星になり

輝く時が来るだろうけど

それまで突き刺さった棘を引き抜いてくれた

あなたの優しさを忘れずに、ひとり人生を生きて行くよ


母さん

もしもまたあなたに会えるなら

夢でもいいからまた会いたい


そう思いながら僕は涙ぐんで

今日も一人生きてゆく

そんなカフェ席の誰かの隣で声をかけられた


まるであの日の僕を知っているかのような

微笑みを浮かべた美しい君に
















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