第98話 重ねて使う強制顕現と、心優しき雲の根。
セーフティの造りというものは、どこも似通うものである。ここ、タオンシャーネについても、コーラリネットと遜色はなかった。違いがあるとすれば、それは人のほうであろう。カウンターの主人は、ゲゾールと同じく妖精の瞳を持つ者だった。あえて秘匿にしている点は、コーザとも変わらない理由による。
カウンターの前に立ったフレデージアが、少しだけ驚いたような表情をしたのは、主人の顔を見ただけで、相手に瞳があるとわかったためだ。
「……」
今まで意識したことはなかったが、これも
黙るフレデージアを見るにつき、主人のほうから声がかかる。フレデージアが小声で応対したのは、妖精の瞳を思えば当然であった。
「冒険者かい? ずいぶん勇敢だね。私たちに何か用だろうか?」
「予備の拳銃をいただきたいのです。
「……その相棒さんは、今どこに?」
「ふふっ。武器が変わってしまうのですから、早々に逃げだしましたよ」
「なるほど、賢い。……もう少し、
「特には」
差し出された拳銃を、フレデージアはしずしずと受け取った。
天は――妖精に味方する。
直後、銃が緑色に光ったのだ。
「あんた……」
顔を歪めてにやりと笑うフレデージアを、主人は訝しむように何度も見た。そこには、いるべきはずの妖精がいないのだ。そうであるにもかかわらず、拳銃が光る。どう考えても、おかしな状況であった。
マーマタロがセーフティに到着したのは、ちょうどフレデージアが銃を構えたときである。制止の言葉よりも早く、引き金は動かされてしまっていた。
「最初から、こうしているべきでした」
発砲と同時に、フレデージアの体が怪しく光る。
この体で失われる寿命が、妖精としての姿に、どのような影響を及ぼすのかは不明だが、そんなことは起こってから気にすればよい。些細な問題だ。すべては、ミージヒトの仇を打つことに劣後する。
「遅かったか」
悔いるマーマタロを横目に、フレデージアが空気をまとう。
もはや、そこにスキルの残数はないはずであったが、今のフレデージアには、委細関係がなかった。エネルギー装置と直結しているのだから、事実上、弾数に上限はない。
胸にかき抱くようにして縮めた腕を、ゆっくりと大きく広げていく。それに呼応して、渦巻く風が放たれた。
壊滅。
セーフティを囲っていた壁は、円形にくり抜かれ、それでも勢いの衰えない風のために、フレデージアを起点とした一直線の道が、にわかに作られていた。
だが、その埒外な攻撃は、無反動ではいられない。焼けるような両腕の痛みに耐えかね、思わず、フレデージアが苦悶の声をあげる。ダンジョンの基盤を、根底から変えてしまうほどの力なのだ。行使するうえで、代償があるのは必然とも言えた。
そうそう連発はできないだろうが、コーザを手にかけるぶんには支障がない。
超人じみた疾駆は、瞬く間に両者が争った地点に達する。
過ぎ去ろうとしたフレデージアの目に、かすかに
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