第47話 帰還への決意
「つまり、どういうことだ?」
当然の疑問をルーチカが口にする。
「部外者はお断りってところだろうな」
コーザとしても、こたびの仕掛けを、完全に見切ったわけではない。
だが、思うところはあった。イトロミカールを始点に、行動しているかどうかだ。
そもそもの話をすれば、
そして、それと同様に、今回はコーザにだけ反応を示した。コーラリネットからここまで、道順をともにしているニシーシが、隣にいるにもかかわらず、単独でコーザに仕掛けが働いたのである。
なれば、きっかけとなる行動は、それよりも前のもの。
コーザにしてみれば、コーラリネットでの活動であり、ニシーシからすればイトロミカールでのそれだ。
(不幸中の幸い……か)
タオンシャーネからの仲介人が、平然とこの場所を通れるのだから、おそらくはイトロミカール周辺をベースに、生活しているかどうかというのが、このポイントを分ける。
つまり、仮に今、自分がどこかのセーフティへと向かい、そこから再び戻って来られるならば、それはこの
それだけではない!
加えて、コーラリネットからイトロミカールへの道筋は、すでに覚えてある。おまけに、ここからコーラリネットまでの手順も、偶然ながらニシーシが発見しているのだ。
まだ、道は絶たれていない。
ほっとするように長く息を吐き、コーザはニシーシへと向きなおる。
「すまない、ニシーシ。怖い思いをいっぱいしたんだから、忘れてしまいたいだろうが、今だけはうちに力を貸してくれ。どんな些細なことでもいい! お前は、どうやってコーラリネットに行ったんだ?」
「……」
「わかっている。思い出したくもないことは、百も承知だ!」
そう言って、コーザは頭をさげるが、なおもニシーシは何も答えようとしなかった。
その姿をコーザが責めるように睨みつければ、再び
口にせずともわかる。それは言外に次のことを示しているのだ。
言いたくないのではない。そもそも答えることができないのだ、と。
だが、どうして?
自発的に来ているのであれば、全く何の手がかりも覚えていないことなぞ、まずありえないだろう。能動的に歩いていれば、思いあたる節がなければおかしい。では、それがもしも積極的にやって来たのではなく、言葉どおりに、本当の迷い子なのだとしたら?
浮かんだ単語を、そうではないと願いながら、コーザは目を泳がせながらつぶやいていた。
「まさか……
Sランク。
自分自身と対象とを、強制的に転移させるという、規格外の能力を有するモンスターだ。その者を前にしては、逃走も戦闘も許されてはいない。正真正銘の怪物である。
下唇を噛みながら、小さくうなずくニシーシの態度に、コーザは正体を確信せざるをえなかった。
その日、ニシーシがセーフティを戯れに出ていったとき、不幸にもダンジョン内で、
「いや……。それなら、仕方ないさ。お前が……無事だっただけでも、奇跡に近いだろう」
弱々しく、コーザはそう口にせざるをえなかった。
だが、同時にそれは、コーラリネットへの順当な帰還が、絶望的になったことを意味している。
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