第33話 ワープゲート
いったい、いくつのワープゲートを潜ったのだろうか。回数が増えるのに応じ、おのずと危険に遭う確率は高まっていく。いつかは、悲惨な状況に陥らざるをえなくなるのだ。
「……」
新たなワープゲートを前にするたび、コーザの緊張はいやがおうでも強まる。自分の認識が甘かったのだと、そう痛感せざるをえなかった。
(こんなにも、ワープゲートで移動しなきゃいけねえなんて、考えもしなかった。あとどれだけやればおわるんだ? それまで、食料は持つのか?)
実際のところ、これまでに消費した糧食は、全体の四割ほどでしかない。特段、不安を覚えるほどの事態ではなかったが、一向に着く気配がないという焦燥感は、コーザの体に重くのしかかっていた。
「ニシーシ、うちは一食だけ減らそうと思う」
「そう……ですか、わかりました。僕なら大丈夫です」
「いや、お前の食事はこれまでどおりの量でいい。あくまでも、うちのだけだ。案内役であるニシーシに倒れられたら、それこそおしまいだからな」
同じことはコーザにも言えるのではないかと、ニシーシはたしなめようとしたのだが、隣でチャールティンに首を振られたため、口に出すまではしなかった。コーザの頑なな態度を見るに、言うだけ無駄だから、好きなようにさせておけということなのだろう。
「勝手にしてくださいまし。ですが、お腹がすいて動けないなんてことには、間違ってもなってほしくないですわ」
「それについては大丈夫だ。あてがある」
怪訝な様子で、その顔を見つめ返すチャールティンだったが、コーザのあてというものは、次の食事に際して明らかとなった。
モンスターである。
彼らを破壊すると、ダンジョンに回収されてしまうというのは、先述したとおりだ。しかし、その破損の具合が中途半端であったらば、どうだろうか? この場合は、いつかの巡回車と同じで、ダメージを負ったままに放置される。それをコーザは狙った。
死なない程度までに痛みつけた、モンスターの一部をもぎ取って、それを食料としたのである。
「やるな、相棒! でも、腹を壊すなよ」
「ああ……」
鬼気迫るコーザの表情に、さしものチャールティンも、何も言うことはできなかった。
そんな生活が何日かつづいたあと、再びコーザたちの前には、あの赤黒い渦が姿を見せていた。
(頼む……!)
祈るような気持ちで、コーザは足を踏み入れる。無意識のうちにつかんだニシーシの腕を、握るコーザの力は強く、少しだけ痛そうに顔を歪めていた。
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