第3話
ピピピッ
私はパッと目を覚まして、スマホのアラームを一瞬で消す。
昨日は寝れなかった。
不機嫌なたくやに気を遣いながら、ご飯をすぐに用意して、お風呂を洗い、りくを一緒にお風呂に入れてもらいたかった・・・けど、その日のたくやはいつにもまして不機嫌で頼むこともできず、りくには申し訳なかったけれど、たくやが入った後に私と一緒に入った。ぎりぎり日付は越さなかったものの、りくを深夜に布団に入れることになってしまった罪悪感。そして、たくやはぶつぶつ段取りが悪いだの「仕事ならこんなミスぜってー許されない」と言っていたのが、耳にこびり付いていて頭が覚醒してほとんど寝た気はしない。
今日はお願い。
私は心の中でそうお願いをした。
相手はたくやではなくて、りく。
(大人しく、寝ていてね?)
自己嫌悪。
本当は、幼いりくをこの家族で一番優先させるべきなのに。昨日だって、ミスをしたのは私だけれど、たくやに協力を仰いで、りくを一番にお風呂に入れて、一番に布団に入れなかきゃいけなかったのに。
こんな情けない母の元に来たりくは私の願いを叶えてくれていた様子で、ぐずることなく私は洗濯物を回して、朝ごはんの準備をしている間良く寝ていてくれた。おかげで、
「いってらっしゃい」
「ああ…・・・」
スムーズにたくやを見送ることができる。
「昨日はごめんなさいね。今日は頑張るから。たくやも疲れていると思うけど、元気にファイトっ」
昨日は忙しくて、やるべきことしかできなかったけれど、昨日のたくやはどこかおかしかった。だから私はたくやに元気になってほしくて、明るい声でたくやを玄関で見送ろうとする。
「いいよな、主婦は。俺を送った後は一休みできるんだから」
不機嫌な顔のままたくやは出ていってしまった。
ひどいっ
バタンと扉が閉まっても、私はその言葉がショックで動けず、涙を流した。
「ママッ、ママッ」
私の足によちよち歩いて来てくれたりく。
「ママ、だいじょーぶ?」
やっぱり、この子は優秀で、とってもいい子だ。
私はしゃがんでりくを抱きしめる。
「ごめんね、ママ。失敗ばかりで・・・・・・」
「失敗はしちゃいけないって・・・・・・パパ、言ってた。パパは、失敗を、絶対に許さないから、失敗はしちゃいけないって」
たくやが口を酸っぱく言い聞かせているのを覚えたりく。
「よく・・・・・・覚えたわね。偉いわ、りく」
その言葉は辛かった。けれど、子どもが言葉、そして意味を覚えていくことは素晴らしいことだ。りくは親馬鹿かもしれないけれど、物覚えがよくて優秀だ。それを否定することなんてできない。
「でもね、それよりも、ぼく・・・・・・ママに笑っていて欲しい」
「ありがと、りく。りくはパパみたいに頭が良くて、ママみたいに優しくなるのよ」
「うん」
ママ、頑張るから。
りくが幸せになれるように、ママ頑張るから。
「今日は頑張るからっねっ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます