第5話 揉めた相手、吉岡の家に招待された?
「あの~刑事さん。仲直りの印と言っちゃなんだが、俺んち此処から近いんだ。急ぐ旅じゃなかったら寄っていってくれよ。あんたの度胸と気風に惚れたよ。おっと勘違いしないでくれ。気風に惚れたと言うことで俺には妻子いるし」
「え~~なにそれ? 妻子持ち、そんなの分かっているわよ。私も妻子持ちはコリゴリよ。あ! こっちの話。しかし気持ちは嬉しいけど……」
「頼むよ、女房は東京の出身だから気が合うと思うよ。引き留める代わり北海道の美味い物ご馳走させてくれ」
詩織はなんでこうなるのと困惑したが確かにアテのある旅でもないし、だからってこんな形になるとは予想外であり結局は強引に押し切られ吉岡という男の車の後ろに着いていった。
二十分くらい走った処で富良野市街に入り富良野駅手前で右に曲がり空知川渡って五百四十四号線を進むと北麓郷という看板が見え間もなく車は停車した。
「さぁ着いたよ、凄い田舎だろう。麓郷って聞いた事はないかい」
「ロクゴウ……良く知らないけど観光地なの」
「そうか年代が違うから無理もないか、もうだいぶ前になるが(北の国から)っていう テレビドラマがあったんだ。その主人公家族が東京からリターンして住み着いたのが麓郷でこの少し先に五郎の家というのが有名なんだ」
「あぁ思い出したわ。DVDを借りて見たことがあるわ。なるほど此処がそうなのね」
吉岡の家の敷地は広く周りには沢山の重機やトラックが置かれていた。外にはかなり大きめのプレハブがあり、資材置き場と事務所のようだ。看板には富良野土木工業株式会社と書かれてある。その奥に結構大きな家があり、そちらが住まいなのだろうか。その敷地に中に車を停めると奥さんだろうか他に二人の女性が駆け寄って来た。その途中なんども頭を下げている。旦那に頭を何度も下げる訳はないし、どうやらその相手は詩織のようだ。
「いらっしゃいませ。すみません主人が強引にお誘いしたそうで、ご迷惑じゃなかったですか」
「いいえ、こちらこそ厚かましく着いて来ました。あっ私、坂本詩織と申します」
「どうもご丁寧に、私は家内の早苗、そして娘の咲子と富貴子です」
どうやら𠮷岡はこちらに向かう途中で電話を入れてあったのだろう。まさか経緯まで話しているのか心配だ。なにしろ、この大男を捻じ伏せアスファルトに顏をこすり付けたのだからバツが悪い。思わぬ形で知り合い招かれたが、歓迎される内容ではないだけに気が引ける。
だがこの吉岡という男、気風がいい。誘われるままに夕飯までご馳走になった。二人が知り合った切っ掛けは、流石に吉岡は言わなかった。おまけ泊まって行けと言われたがそれは断った。だが執拗に誘われ、それなら明日バーベキュー大会をやるから付き合ってくれと言われた。今夜泊まる宿まで紹介してくれた。もはや逃げる訳にも行かない。北海道は知人も居ないし旅の情けに甘える事にした。
つづく
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