異世界あるあるなんて存在しない世界、改変スキルで俺好み

白悟那美 破捨多

第1話

俺は今、夢のような現実を見ている。

何故ならこの俺、滝田 颯太は高校の帰り道で突然トラックが突っ込んできたかと思ったら知らないおじいさんが目の前にいて、しかもそのおじいさんは自分の事を神だと言う。

周りを見てみると一面の雲で視界は埋め尽くされている。戸惑う俺に対しおじいさんが話しかけてくる。

「いやー、君には実に申し訳ない事をしてしまった。まさか、トラックに轢かれそうな子供を救うためにタイヤをパンクさせて、スリップさせた方向に人がいるとは思わなくてのう。本当に申し訳ない」

「いやいや、確かにびっくりしましたけど、頭をあげてくださいよ。神様は子供を救おうとしたんですから、俺がそこに居たのは偶然ですし、神様が謝る必要はないですよ」

「いーや、神としてワシには罪のない君を死なせてしまった責任がある!だ〜か〜ら〜、君にワシからとっておきのプレゼントを送ろうと思う」

「え?いやいや悪いですよ。それに、こういう時って普通に考えて」

「まぁ、君の思っている通りじゃよ。元の世界に生き返らせることは無理じゃ。だから、ワシからのプレゼントは別の世界をあげ....」

俺はその瞬間に興奮して、神様の話を遮り

「転生させてくれるってことですね!」

「はっはっ、元気がいいのう。そういう事じゃよ。話が早くて助かるのう、じゃあ転生した後に脳内にでも話しかけるからの」

「分かりました。遂に俺も異世界に行ける日が来るなんて信じられないです。本当にありがとうございます神様!」

「ホッホッホッ、まさか殺してしまった子にお礼を言われるとは思わんかったの〜」

神様がそう言うと共に、俺を囲むように神々しいオーラを放つ魔法陣が現れる

「君は、今から行く世界を最高のものに出来るじゃろう。まずは小さな事からでも変えていけばいい」

「はい、俺頑張って異世界で幸せになれるようにします」

「うむ、心意気良しじゃな。それでは異世界での君の人生が素晴らしい事を常に祈っておるぞ」

神様にそう言われ、俺を囲んでいた魔法陣が激しく光り出し、俺はその光に包まれた後、その場から姿を消すのだった。


それから何分くらいたっただろうか、俺はまだ光に包まれていた。

「なんか、遅くない?こういうのって普通、平原とかに瞬間移動するんじゃないのか?」

多分転生が完了するまで神様に声は届かないのだろう。神様からも連絡がない、俺はこの退屈な時間をもう少しだけ過ごした後にやっと転生が完了したのだった。

でも俺の場合、体とかそのまんまだから転生っていうのか?

そんな疑問が頭をよぎるが、俺は異世界に行けると言うだけで良かったのだ。そんな小さい事は最早問題ではない。

「でも、なんか普通に最初ってこんなヤバそうな所から始まるものなのか?」

俺が着いた場所は光がなく、目の前に明らかに魔王とかが住んでそうな城があるのだ。

そしてその城の扉が開き、中から普通の転生物ならば中盤以降に戦うぐらいのガッチガチの装備をした魔族のような奴が出てきた。

「おいおい、神様はこの事分かってやってるのかよ。だとしたらここに来て1分も経たずに死にそうなんだが?」

だが、こんな序盤で俺みたいな雑魚が見つかる訳がない。不幸中の幸いか、ここにはでかい岩が沢山ある、岩陰に隠れていればバレる事はないだろう。でも、今の感じの流れだと

「おい!出て来いよ!何者か知らねぇけど、ここが何処か分かっていての愚行か?」

ですよね〜っ!!!と、あまりの不幸続きに俺は半泣きになり、もう終わったと絶望していた俺にやっと希望が見える。

「少年!聞こえるか少年!ワシじゃ!」

ついに神様の声が聞こえたのだ。

「はい、聞こえます!これどういう状況なんですか!?なんで俺いきなりこんなやばい所にいるんですか!?」

「実にすまんのじゃが、あの魔法陣は到着先が選べなくてのう。まさか、魔王城の前に着くとは思っておらんかったのじゃ」

「そんなのってありかよ!俺の異世界転生、序盤から何も上手くいかねぇー!」

「そこか!」

「やべっ!あまりのストレスで状況忘れてたよクソが!」

なんなんだよ全く、結局異世界で幸せになったり、最強になったりってのは作品の中での話かよ。そうだよな、当たり前だよな。

やっぱり、皆が思っているような異世界あるあるなんて存在しなかった。

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