第ニ幕「アイドル学園☆舞台芸術科!!」


 大きくない? この劇場?


 私はもう少し小さな劇場を想像していたが二階席まである大きな劇場が満席だったので驚いた、長沢さん結構有名な役者さんなんじゃと私は思った、そして舞台の幕が上がる。



***



「納得できねーよ拓海たくみさん!」


 メンバーの中で一番若い京刃きょうや村上京刃むらかみきょうやがそう言ってきらびやかなブレザーをひるがえし舞台からを降りようとする。


「拓海さん、何で俺たちアイドルが演技なんてしなきゃいけないんだよ!!」


 その舞台上ではアイドル学園にある設定の明らかに装飾過多の演劇部部室のセットが組まれ、若く目付き悪い系イケメンがその小さな背丈で感情をぶちまけ演じている。


 架空のアイドル学園って全てが豪華なイメージよね、部室までキラキラしてる。


「なに言ってるんだ京刃、僕らはアイドルだ、夢をファンに与えるのがアイドルの仕事だ」


 あっ、長沢さん、いや今は役名の坂本拓海さかもとたくみさんか。


「そうだよ~京刃く~ん、ウチらは偶像のお王子様なんや♪ フアンが望むなら時代駆ける侍にも部活に燃えるスポーツプレイヤーにもなるのよ」


 京都なまり? いや、京都はなまってるって言わないのかな?


 私は細目のイケメン、三条和墲さんじょうなごむさんの役者さんを見て京都人がこだわりそうな事に想いをはせる。


 私は結局お義母さんに真那を預け坂本さんの舞台に来ていた、そしてその舞台見惚れていた、この舞台[アイドル学園☆舞台芸術科!!]はアイドル音楽学園に新設された舞台芸術科で慣れない演技を学ぶアイドル達の苦闘を描く青春群像劇だった。


 長沢さん、いえ、拓海さん若い子に負けないで。


「拓海はどうせアイドルになれないと思ってるからココでいいんだ、俺は歌いたいんだ歌って踊ってキラメキたいんだ!!」


 京刃くんは歌って踊りたいんだね。


「京刃く~ん 君は言って良いことと悪い事があると分からないのかな?」


 確かに! そうね細目さん


「いいんだ和墲、僕の事は……でも京刃、僕らアイドルはファンのみんなやスタッフさんが支えてくれるから輝けるんだ、一人じゃダメなんだよ」


 拓海さん(長沢さん)優しい。


「解ってる、解ってるけど……俺は」


 うんうん、若い子は悩んで大きくなるんだよ京刃くん♪


「京刃にとってアイドルは小さい頃からの憧れなのはわかってる、僕の事はいい」


 なんか京刃くん葛藤があるのね! あるのね♪


「拓海くん、ええのんか?」


 二人は京刃くんより少し大人だね。


「でもね京刃、僕は長くアイドルをやってしまったからわかる、自分ばかりじゃダメなんだ、ファンのみんなにとっての僕らは僕らの思ってる僕らじゃないし、僕らが自分のエゴでアイドルをやればファンは離れてしまう……」


 確かに自分自分はダメだけど……


「それじゃ拓海はファンの為に自分のやりたい事を我慢しろって言うのか? それは自分の人生だっていえんのか?! ファンのみんなだってそんな上っ面を合わせたニセモノのアイドルを見て喜んで見てくれんのか?!」


 そうよね京刃くん、我慢ばかりしてちゃ自分を表現出来ないよね。


「京刃、確かに僕はそれで失敗したアイドルだ、ファンの為にファンの為にとずっと気を使って生きて来てしまった、だから……だから今でもアイドルの世界に一応はいられるんだけど……」


 拓海さん(長沢さん)の演技泣きそう……。


「拓海くんが努力してんのはボクらもフアンのみんなも知ってるで」


 あっ細目さん、ファンじゃなくフンって言ってる、なんか好き♪


「拓海さん俺は……」


「京刃、僕は演技が好きだ、ファンの為に理想のアイドルになろうと演じ続けた人生だったけど、ようやく僕の生きる道が見つかったと思ったんだ、このアイドル学園☆舞台芸術科で僕のやりたい事とファンが求めてくれる事が一つになったんだ、これは僕の求めていた舞台ばしょなんだ」


 拓海さん(長沢さん)は役者さんだもんね、なんか舞台の話と長沢さんがリンクして見えて来ちゃう。


「京刃くん、拓海くんはこう言いたいんよ、ファンや自分、現場スタッフさんや運営さんみんなが求める時、アイドルは輝けるんやって」


 あっ!!


 舞台は静かな細目さんのセリフと共に暗転し、次の瞬間京刃さん一人にスポットライトが当たった。


「拓海、和墲、……俺、舞台でアイドルやれるかな、子供頃に見たキラキラ輝くあのアイドルに……この舞台で!!」


 ん? 音楽? イントロ??


 静かに音楽が流れ始める。



       ♪♪♪



なれるさ♪ お前なら京刃♪


なれるよ♪ ウチらなら京刃くん♪


なれるかな♪ 俺は♪



 拓海さん(長沢さん)が始めに歌い出して、続いて和墲さん、二人に順にスポットライト、それに京刃くんも歌い始めた、ミュージカルだ!!



きっとなれるさ♪ お前なら京刃♪


きっとなれるよ♪ ウチらなら京刃くん♪


きっとなれるかな♪ 俺達は♪



 アレ? なんだろ?? 制服のブレザー脱いで舞台の後ろに、あっ黒子さんに渡してる。


 ……ネクタイも外して黒子さんから何か受け取った。



そうさ京刃和墲♪ 僕らはアイドル、輝く為に生まれた♪


そうや拓海くん京刃くん♪ ウチらはみんなと一緒に輝くんや♪


拓海さん和墲さん♪ 俺も輝きたい♪ あの舞台の上にいた、子供の頃見たアイドルの様に♪ 今見てる拓海さん和墲さんの様に♪♪



 黒の蝶ネクタイ? なんで???


 あっ!!


 そうか! 次の展開の為に歌いながら衣装を変えてるんだ。


「長沢さんごめんなさい! さえないおじさんなんて思ってしまってて!!」


 私は目を輝かせる、舞台の上には手を広げ互いを称え合うキラキラと輝くアイドルの姿があった。



***



 場面転換だ……。



 さっきまで部室だった場所がカフェになってる。


「「「ようこそ!!! アイドルカフェ☆キラメキに♪♪♪」」」



 劇中劇のタイトルを三人が叫ぶ。



「いらっしゃいませお客様、とうカフェはお客様のいこいのオアシスです」


 拓海さん(長沢さん)、カウンターの上にあったエプロンを結んでカフェの店員さんとなってお客様を優しく迎える。


「いらっしゃいませ、あら、お嬢さん、またこられて、いえいえ、おばちゃんなんて思てませんわ~」


 和墲さんも京刃くんもエプロン姿、拓海さん(長沢さん)凛々しい、和墲さんなんかおしゃれな感じになってる、京刃くんはなんかエプロンおっきくない? 可愛い♪♪


「いらっしゃいませ……、イケメンだなんてそんなことあ、り、ま、せ、ん、よ、(怒)」


(チッ、コーヒーじゃなく俺らが目当てかよ!)

 

 あっ、誰もいないテーブルを回りながら演技をしている、京刃くんの(コーヒーじゃなく……)ってくだり、後ろ向いて喋って心の声を表現してるんだ。


 そうか、これが京刃くんが嫌がっていた舞台なんだ、確か演技嫌だって言ってたよね。


 でも、京刃くん演技じょうず!


 いえみんな演技ウマい!!


 私はかなり失礼な事を思った。


「拓海さん(長沢さん)ってこんなにも素敵に輝く人だったんだ……」



 そうか役者さんだもんね……



 私はいつもと違い、さえないイケメンから舞台の上でスポットライトを浴びて輝くイケメンアイドルへと変貌を遂げた拓海さん(長沢さん)を見てまるで彼に恋してるような気分になっていた。


 そしてストーリーはアイドルカフェ☆キラメキを舞台にした歌とコメディのパートがあって、またあの豪華な部室と制服に戻る。


「な、舞台も結構良いもんだろ京刃?」


 拓海さん(長沢さん)やりきったって演技だったよ。


「ふん、ミュージカルパートは良かったかもな」


 京刃くんデレた♪♪


「まあまあお二人さん、どうせロートルアイドルと跳ねっ返りアイドルなんやから舞台立たせてもらえてるだけでありがたい思わなあかんよ~♪」


 わ~、細目さんいけずだ~~♪


「「嫌みな京男に言われたくない!!」」


 ウフっ♪♪♪


 オチがついた♪


 本当に今日の舞台来て良かった……。


 本当に楽しかった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る