第2話<<紺碧>>
そんな街の中にどっしりと構えているのが、春花の通う高等学校だった。彼女の家から坂を真っ直ぐ駆け下りると、そこそこの大きさの商店街に入る。横に一、二回曲がれば学校に辿り着く。そんな坂を自転車に跨り、全速力で駆ける一人の女の子。
「遅れる遅れる遅れる」
声にならぬ声で
「春ちゃん、待って」
後ろからゼェゼェ言う声が聞こえてきたので振り返ってみると、そこには見知った顔が自転車を漕いでいた。
「牧ちゃん、遅刻するよ」
怪獣と呼ばれ、遊び尽くしながらも着実に
そんな優等生の牧子がこんな大遅刻をする筈がない。とは思いつつも、やはり妹の世話やらがあって忙しいのかなと考え、春花は牧子を急かす。それに対して牧子は息を切らしながら
「春ちゃん、用事あるの? まだそんな急ぐような時間じゃないよ」
その言葉を聞いて、春夏は目を丸くした。
確かに、言われてみれば妹に起こされてから時計は確認していない。と言うか、確認する余裕すらなかった。毎日一緒に登校している牧子は、遅刻しそうな時は毎回呼び
「ごめん、今何時?」
「まだ七時二〇分だよ」
春花は派手な音を立てながら、今度はベッドからではなく、自転車からずり落ちた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます