第27話 伝統.1

俺はすかさずナッグ先生に聞いたんだ。


「いい事って何ですか?」

「この学園はね、昔から面白い伝統がありましてね。それが手合わせによる決闘ですよ。」

「はい?」

(いや待って。決闘って何。まさか、前世でもあったあの決闘の事を言っているのか・・・)


俺はもちろん、他の生徒もポカーンとした感じだ。

そりゃそうだろう。

決闘っていえば、双方の承諾のもと、降参こうさんするか気絶するかみたいな感じだよな。

生で見た事はないけど、よくテレビなんかでやってたもんな。

鐘がカンカンカンー!って鳴ってたりしたよな。

まだ13歳の子供だぞ?

っていうか、自分のクラスの生徒を戦わすってどういう学園だここ。

え、めっちゃ怖いんだけど。


大人になれば、多少の駆け引きや覚悟は必要になる場面も実際にあるから、そういう事があってもまぁ分かる。けど、さすがに13歳の子供を学校で戦わすってどうなの?

この世界の常識なのか?そうなのか?


「昔からの学園の伝統ですからね。大事になったりはしませんから安心してくださいね。意見の食い違いや、対立をした場合に話し合いで解決できない場合、双方の承諾の許決闘を学園で許可しています。もちろん学園側で色々ルールをつけさせて頂きますけどね。その中で負けた側は勝った側の言い分を聞き入れなければなりません。」


マジか。父さんと手合わせはしたけど、全くの初対面のヤツでさらには俺に切れてるヤツとの手合わせでケガとか心配なんだけどな。


「では、ここでは手合わせはできないですから、移動しましょうか。」

(まじか・・・。)


俺達はナッグ先生の後ろをスタスタと着いていき、説明を受けた競技場に到着した。

説明を受けた時から少し疑問には思っていたけど、この競技場には競技をする道具や場所が見当たらないんだよな。

例えるなら、何もない超巨大な体育館的な感じだろうな。

(はは、もしかして校長先生が俺に制服を出してくれた時みたいに魔法陣みたいなものを発動させてとかだったりな。)


「ちょっと待ってくださいね。今手合わせ用の舞台を出しますからね。」

っと言うとナッグ先生はブツブツと何か唱えだした。

その瞬間に魔法陣みたいな紋様が出現し、そこから円型の形をしたものが出てきた。


(マジだ。マジで魔法陣だ。)

まぁ予想はつきやすいだろうけど、まさかドンピシャだったとは・・・。


「これは闘技舞台と呼ばれる手合わせ用の舞台です。では、闘技舞台に上がって下さい。」


ナッグ先生がそう言うと、エルリス二世みたいなヤツはすぐに闘技舞台の上に上がった。

流れ的に仕方なく俺も一緒に闘技舞台に上がった。


「手合わせを行う際、双方の主張や勝った方への権利を得る事ができます。審判者が主張を聞き了承して手合わせとなります。いいですか?」


「おう。」

「あー、はい。」

「では双方の主張を述べよ。」

っと、ナッグ先生が言うとグロギシア=ラルドが口を開いた。


「俺は、こんな弱い奴らとワイワイとやるなんて考えられねぇ。弱肉強食!俺に負ければその時点でコイツは俺の下僕だ!」

(おー。若いのに弱肉強食なんて難しい言葉よく知っているな。前世で俺が13歳の頃なんて四字熟語なんてあんまり分からなかったけどなぁ。)


エルリス二世というのは訂正しよう。

この少年はアイツより優秀だわ。

社会は思った以上にシビアで厳しい。この子の言う通り弱肉強食だ。

弱い人間は強い人間に落とされる。

13歳でそれを理解しているなら素晴らしい。

多分かなり努力したんだろう。っと思う。

だが、俺としてはいかんせん、少し説教をしたい所だな。

人との繋がりが生きていく中でどれだけ大切なのかがまだ分かっていない。


「さて、キョウ君だったかな。君の主張はなんです?」

「あ、はい。」

(どうしよう。別に何もないんだけどなぁ。)


「じゃ、俺は同じクラスの人間同士協力こそ重要だと思うんで、俺が勝ったら上も下もない対等に接するというのでお願いします。」

「なるほど。分かりました。それでは今から手合わせ試合を始めます。ルールとして攻撃は五行属性のみとします。場外又は降参、魔力切れをした方を敗者とします。これはあくまで手合わせ試合ですので、急所狙いや相手を死に至らしめる手段は禁止とします。宜しいですね。」


「おう。」

「分かりました。」

「宜しい。では手合わせ試合開始!」

そして俺とグロギシア=ラルドの手合わせ試合が開始された。






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