第14話 エルリスとの手合わせ.1
次の朝がやってきた。
(はぁ、こんなにいい天気なのに嫌な気分だなぁ。)
俺とエルリス、それに父さんは朝食を済ませ、3人で外に出た。
エルリスがどれだけのものか分からないが、まさかこういう状況になるとはな。
「よし。昨夜言った通り、今からお前達二人による手合わせを行う!」
エルリスは朝っぱらから、俺の方を見下した表情で見ながらニヤニヤしている。
(平和に過ごしたいだけなのに、何やってんだ俺は・・・。はぁ。)
「キョウ。」
っと、父さんが俺の方へ寄ってきた。
「明日はお前の学園試験があるっていうのに、すまんな。」
「全然大丈夫だよ。でも、本当に兄さんと手合わせして大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫だ。それに最近のエルリスは五行属性に対しての向上心がないからな。今のままでこれから先通用すると思っている節もあるしな。」
(いや、全く父さんの言う通りだ。人生を舐めてるよ、ホント。)
そういうと、次はエルリスの方へ近寄って行った。
「いいか?エルリスよ。兄弟同士の手合わせと言っても、きちんと真剣にやるんだぞ。キョウは五行属性を得ているんだ。舐めてかかると痛い目にあうのはお前だぞ。」
「ハハハ。まぁ、俺とキョウじゃ天と地の差だろうけどな。まぁ、程々に真剣にやるさ。」
父さんは何やらエルリスに言ってるみたいだ。
すぐに父さんはエルリスから離れて立ち合い者として俺とエルリスが見える位置へと移動した。
「では、キョウとエルリスによる手合わせを始める!勝負方法は五行属性のみ!魔力切れ、気絶、降参をした方が敗者だ!二人共いいな!」
「うん。」
「あぁ。」
「では始め!」
父さんの開始合図の声が大きく響いた。
「ハハ!キョウ!まぁ、多少手加減はしてやるよ!」
何やらエルリスが一人でキャンキャン吠えているが無視だな。
とにかく、エルリスがどれだけ強いか全く分からん以上は俺の方はできるだけ真剣にやった方がいいよな。
あれだけ自意識過剰じいしきかじょうなヤツなんだから、もしかするともしかしてってのもあるしな。
(特異属性、「全」発動。行くぞ!)
昨日父さんが俺の五行属性の使い方に付き合ってくれたおかげで、やり方はだいたい分かった。
後はイメージだけだ。
エルリスは確か、炎の五行属性者だったみたいだし、ここは水の五行属性だ。
さらに昨日ベッドで思いついた事だが、魔力を通して身体の強化もできるかもしれないとか考えたが、それもこの際やってみよう。
「いくよ、兄さん!」
俺はイメージした通りに両手に水の五行属性を発動させて、両方の手に昨日放った火球程度の大きさの水の玉を出した。
さらに・・・。身体全体に力が強化されるイメージをした。
(お、メチャクチャ魔力が身体全体に循環じゅんかんされて力が溢れてくるのが分かる。ダメ元でもあったけど身体強化の成功かな?)
「クク。何だお前は水属性なのかよ。まぁハンデとしては十分だなぁ!」
(コイツ、俺が弟だからって舐めすぎだろ。絶対に負けん!)
「よし。行くぞ!水球すいきゅう!」
俺はちょっと力を入れて、水球を勢いよく放った。
「お、おい!な、何だその水の大きさは!?う、うわぁ!」
ふむ。何かとても慌ててるみたいだが、おそらく演技だろう。
あれだけ自信満々に言っていたヤツだ。相当力があるんだろうし。
っと俺はすぐに追加で水球をもう一つ放ち、身体から漲みなぎる力を出してダッシュでエルリスの方へと走った。
「え・・・。」
っと、一歩足を踏み出しただけなのに真横にエルリスがいる。
(え、えーー!身体強化できたんだとは思ったけど、こんなに一瞬で!)
ちなみに、俺とエルリスとの距離は五行属性での手合わせだった為、100メートルくらいは離れていたんだよね。
身体強化みたいなのができれば嬉しいなぁっとは思っていたけど、まさかこれ程とはさすがに自分自身の力に俺は驚いた。
っとボケーっとしてる場合じゃない。
水球の玉を二つ放ち、すでに俺はエルリスの真横に来ている。
(あくまで五行属性での手合わせだし・・・よし、次は火の五行属性だ。)
俺は迷わず、真横から火球を出しエルリスの方へと放とうとしていた。
放とうとしてはいたんだけど、一つ不思議に思う事がある。
俺は水球を正面から二つ放ち、さらには真横に移動して火球を出しエルリスに放とうとしている。
にも、関わらずエルリスは慌ててる感じで、五行属性を出そうとしていない。
何でだ?
もしかして、俺の攻撃じゃ、全くダメージがないから五行属性を出すまでもないって事か?
ったく、舐められたもんだな。さすがにそう考えると腹が立つ。
「兄さん!行くぞ!」
何やら色々考えてる内に俺は無意識に火球の方へ魔力をやっていたみたいだ。
まだ放たれていない火球はさらに大きくなり、エルリスが俺の視界から全く見えなくなってしまうくらいの大きさになってしまった訳だ。
「う、うわぁー!」
エルリスが叫んでるが、俺は気にせず火球を放とうとする。
「待て!そこまでだ!キョウ!止めるんだ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます