第15話 エルリスとの手合わせ.2

突然の父さんの声に俺は反射的に放とうとしていた火球を止めた。

っと、同時にエルリスに俺が放っていた水球が直撃・・・。


(バッシャーン!!)

「あ・・・。」


エルリスはそのまま勢いよくその場に倒れてしまい、何故だか目をグルグル回している状態だな。

っていうか、水球は動きを鈍らせる為に放った攻撃であって、攻撃自体にそれ程の威力はないはずなんだけどな。

それよりも、まだ手合わせの途中で父さんに止められた理由が気になる所だな。


「キョウ、すまんな。途中で止めてしまって。」


俺とエルリスの所へ父さんが歩いてきて俺にそう言ってきた。

まぁ、エルリスがどれ程の実力者なのか少々気にはなるけど、別に意地でもって訳じゃないから、別に途中で終わってしまってもいいけどね。


「大丈夫だよ、父さん。ちょっと兄さんの実力が見れなくて残念だったけどね。」

「いや、今お前の横で気絶している情けない姿がエルリスの実力そのものだ。」

「へ??」


んーっと、聞き間違えたんだと思う。

普通にサラーっと言われたもんだから、頭に入ってこなかったし。

「お前の横で気絶している情けない姿はエルリスの演技そのものだ。」って言ったんだろうな。

いつもあれだけ俺に対して上から目線で、人を卑下ひげにして自分は強い的な感じだし。


(・・・・・。)

一応、念の為もう一回聞いておこう。


「ご、ごめんなさい。父さん。もう一回言って欲しいんだけど。俺多分聞き間違っちゃって。」

っと言うと、父さんは少し困った表情をしながら少し溜息をつきながら口を開いた。


「あれだけいつも傲慢ごうまんでお前の事を見下し言ってたんだ。困惑もするだろう・・・。キョウよ、今倒れているエルリスこそが本来のエルリスなんだ。」


「え・・・えーーー!」


聞き間違いじゃないのか!

っていうか、それじゃ今までエルリスは何であんな態度だったんだ。

え?え?マジで訳が分からん。

前世でも、意味不明に自信がある人間や、人を見下すアホなんかはたくさんいたけど、エルリスの場合、一欠片ひとかけらの根拠もないじゃないか。

弟として、自分より強いのが当たり前だと思っていたし、嫌いな兄だが五行属性に関して偉そうに言ってたんだから、それなりに尊敬できる存在だと考えてた訳であって。


「すまん。長男として生まれ五行属性を10歳で得た事により俺も母さんもエルリスを特別扱いして甘やかしてしまったせいだ。おかげで、ろくに鍛錬もせず、いつもブラブラと遊ぶだけ。キョウにはエルリスの様になって欲しくなくて厳しくしてしまった。今日の手合わせもキョウの足元にも及ばずエルリスが負ける事も予測できていた。」


「そ、そうなんだ。」

さらに父さんの話は続く。


「今日の手合わせでキョウに敗北する事により、長男として兄として五行属性者として自身と向き合い気持ちを改めてもらいたいと思ってたんだが・・・まさか、気絶してしまうとはな。」


ふむふむ。何となく父さんの言いたい事は分かる。

俺も前世で親になっていたなら、こんな息子がいればどうにかして変わってもらいたいを思うだろうしな。

まぁ、いいや。手合わせが終わったんなら、後はのんびり平和に過ごそう。

とりあえずエルリスは父さんが何とかするだろうし、父さんに一言だけ言って俺は先に帰らせてもらうかな。

っと思ってた矢先に父さんがまた喋りだした。


「キョウ、本来炎の属性者は炎のみ、水の属性者は水のみ。五行属性者でも同時に使える人間滅多にいない。お前の属性が何かは聞かないがお前は俺の息子だ。明日から学園にいく訳だが、いつでも我慢できなくなったら帰ってくるんだぞ。」


まさかの突然の感動の会話!

突然過ぎて、固まってしまった。

同時にやっぱり家族っていいなぁって思ったし、俺はこの人の息子でよかったと本気で思えたんだ。


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