第16話 異例


コボルトとブラックワイバーンの魔石を回収した俺達は、早速受付のソフィアへ依頼達成の報告を行っていた。


「リュウトさん達、ゴブリンの時もそうでしたけど依頼達成がいくらなんでも早すぎませんか?って、この魔石は!?」


「ああ、それはブラックワイバーンの魔石だよ。コボルトを仕留めた後に突然襲われたんだ。」


ブラックワイバーンと聞いて周りの冒険者達はどよめいていた。確かにあの飛行能力はかなり厄介なのかもしれない。


「…取り敢えず、また奥の部屋に…。」


周りの冒険者達から注目を集めているのに気付き、気を利かせてくれたのか、ソフィアと最初に会った時と同じ受付カウンターの奥の部屋へと案内された。


「普通の低ランク冒険者がブラックワイバーンを討伐したとなれば異例中の異例ですが、リュウトさんなら驚きはしません。リアさんの実力の方は気になりますが…。それよりも、本来なら低ランクの魔物しか生息していない筈の場所にブラックワイバーンが現れた事の方が問題なんです。」


確かに、低ランク冒険者向けにゴブリンやコボルトの討伐依頼が出される様な森でC+ランクの魔物などが現れては問題だろう。俺達以外の低ランク冒険者なら殆ど何も出来ずにワイバーンにやられていたのではないだろうか。


「そこでですね…。本来ならまだ新米冒険者のリュウトさん達に頼む様な事では無いんですが、リュウトさん達に森の奥を調査して欲しいんです。丁度今ワーテル支部には高ランクの魔物と戦える様な冒険者が居ないんです…。今回がそうと決まった訳では無いんですが、ブラックワイバーンの様な高ランクの魔物が発生し、外へと出てくる突発性のダンジョンが発生している可能性もあるので、出来れば早急に調査をお願いしたいんです。」


ダンジョンは決まった場所にだけずっと在り続けるものだと思っていたが、突発性ダンジョンなるものが存在するとは驚きである。


「分かった。じゃあ早速明日にでも調査に行ってくるよ。リアもそれで良い?」


「こ、高ランクの魔物が発生するダンジョンと聞くと少し不安ですけど…。リュウトさんが行くなら着いて行きます。」


俺、意外とリアに信用されてるのか?


「それと、お二人の冒険者ランクとパーティランクはD+ランクに昇格とさせてもらいますね。」


「えっ?」


「リュウトさん達には言ってなかったんですが、私は副ギルドマスターをやらせてもらっているので、私の権限でD+ランクまでは昇格させる事が出来るんですよ。今回の調査依頼を受けていただくお礼みたいなものです。それ以上は高ランクの依頼を複数達成したり、昇格試験を受けてもらう必要がありますが…。それと、私が言うのもなんなんですが…。無理はしないでくださいね。」


「勿論。こんな所で死ぬ気はないよ。」


しかし何故階級の事を黙っていたのだろうか。まあそれは置いておこう。依頼達成報酬の銀貨30枚とブラックワイバーンの魔石を売って得た金貨6枚を分け合った俺達は、何処かで昼食を摂りたいと言うのと、この世界の店を見て回りたいと言う事で、リアと2人で街へと繰り出していた。

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