第15話 急襲
女将の娘さんに一階の食堂へ案内された俺は、異世界に来て初めての食事を堪能していた。一体どんなメニューが出てくるのかと少し身構えていたが、出てきたのはなかなか美味そうなステーキと普通のサラダで一安心。食の合う合わないは重要だからな、プロ野球のハズレ助っ人外国人達が証明している。
米は無いが、食事と言う異世界生活における大きな懸念点の1つは払拭されたと言える。その後異世界で初の夜を越えた俺は、朝早くからギルドの掲示板の前に立っていた。
「さて、一応F+ランクまでの依頼は受けられる様になった訳だが…。」
「それならこのコボルト討伐の依頼はどうですか?昨日は殆どスキルを試せなかったですし…。」
リアが指差したのはF+ランクのコボルト討伐依頼だった。2連続で魔物の討伐依頼を受けようとはなかなか好戦的である。
「出現場所は昨日行った森と同じみたいだな。」
昨日と同じくワーテル郊外の森で数匹のコボルトが目撃されたらしかった。
「よし、じゃあ早速出発しよう。」
「今日はわたしにももうちょっと魔法を使わせてもらえると嬉しいです…。」
森に入って少し歩くと、短剣を持った3体のコボルトと遭遇した。そこまで深い森ではないのだが、かなり接近しないと気付かなかった。斥候系のスキル辺りを習得したいところだ。
「ここはわたしに任せて下さい。」
俺が少し後ろに下がると、リアはコボルトの足元へ一斉に土の剣を複数地面から突き上げるる様に撃ち出していた。声を上げる暇すらなく貫かれたコボルト達。魔石を回収し、余りにも早く依頼が終わってしまったのでこれじゃあ移動の方が時間かかってるな…。そんか事を考えていた俺の足元を、猛スピードで何かの影が横切った。
「あ、あれは!?」
突如飛来した敵に気付き、驚きの声を上げるリア。俺の視界に捉えられたのは翼開長2mくらいはありそうな黒い翼竜だった。
早速俺は『世界眼』を向ける。
ブラックワイバーン C+ランク
身体能力上昇・中
なんと。低ランクの魔物しか居ないと思っていた森で高ランクの魔物に、それも下級と言えど元の世界でも知られていたドラゴン種に遭遇するとは驚きである。相当飛行スピードは早いらしく、リアが放った火球をあっさりと回避していた。
「ここは俺も『風の
コボルトには手を出すなと言われていた俺だが、ワイバーンが相手なら話は別である。手始めに突風を巻き起こすと、空を舞っていたワイバーンが酸を吐きながら体勢を崩して下降してくる。
「そこだっ!」
酸攻撃を俺はワイバーンの胴体に狙いを定め、三日月型の風の刃を撃ち出した。
「リュウトさん、魔法も使えたんですか…!?」
ワイバーンは鋭い爪で風の刃を相殺しようとした様だが、あっさりと黒い鱗に覆われた体が一文字斬りの様に両断されていた。
「これは凄い…。リアの使っていた風属性魔法より更に威力も高そうに見えたぞ…!」
今のはクレッセント・ムーンとでも名付けようか…。人生初の魔法使用にテンションが上がる俺なのであった。
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