キャラメルリボンのリボン要素ってどこ?

「ねえサナ、前から疑問に思っていたんだけど」


「なんよメル」


「今ウチら、キャラメルリボン食ってるじゃん」


「食ってるね」



 ワタシたちは、人気店のダブルサイズのアイスを食べている。


「リボン要素ってどこなん?」


 たしかに、ワタシもそこは疑問だった。

 なので、スマホで調べてみる。


「キャラメルが帯状に伸びてるじゃん。それだって」


 リボンとは帯のことで、文字通り伸びて帯のようになっている状態をリボンというらしい。

 

「おお。たしかに。じゃあさ、このポッピングシャワーってどんな意味なん? シャワー要素はこのカラフルなつぶつぶなんか? シャワーっていうか隕石じゃん」


「かもしれん。待ってて」


 できれば、自分で調べて欲しい。

 だが、こいつはよりにもよって片手にかき氷を持っていやがるのだ。


「やっぱりそうだ。ポップロックキャンディなんだってよ」


「ほお。たしかに」


 ゴリゴリと音を立てながら、メルがポッピングなキャンディをクラッシュする。


「じゃあ宇治金時は」


「それは調べような」


「ケチー」といいながら、メルは宇治金時をムシャムシャ。


「サナは、もう浴衣買ったん?」


「まだ。ていうか先に痩せんと」


「大丈夫だって。サナは高一のときのスク水まだ着れるじゃん」


「でも、お腹が気になるお年頃なんよ」


「へーきへーき。今から買いに行くべ」


「待ちなよ、メル」


 もうかき氷もアイスも食べ終えたメルに、浴衣コーナーまで連れてこられる。


 その間に、ワタシは大慌てでアイスを平らげた。


「おー。ウチ、これするわ」


 スイカバーやフラペチーノなどがプリントされたミニ浴衣を、メルはチョイスする。


「お前のセンス、独特だな」


「一目惚れしたわ。だって、夏って感じだろ?」


「たしかに。ワタシはもっと地味なの選ぼっと」


「これなんてどうだ? ショコラ柄だってよ」


「いや全体がキャラメルカラーって、難易度が高すぎっしょ」


 いくらワタシの背が高いからと言って、さすがに大人びすぎていた。


「お前タッパあるんだから、いけるいける」


「ムリ。ちょっとこれは」


「じゃあ、これなんてどうだ?」



 よくあるタイプの淡いピンクの浴衣だ。


「これにな。コイツを付けてみると」


 メルが用意してくれたのは、帯紐だった。

 真ん中に四角くて、茶色い帯飾りが。

 よく見ると、キャラメルみたいな感じである。

 

「おお! これぞ、キャラメルリボン!」


「どうよ。さっき食ったアイスみたいな柄だろ?」

 

「うんうん。これ買うわ!」

 

 これなら、ワタシでも似合うかも。


「ウチらの縁を、帯が結んだな」


「ウマいこと言ったと思うなよー」


「次は水着だな。ブラウンの紐ビキニいくぞ」


「ムリムリムリ……」


 そのキャラメルリボンは、いらんわ。

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ちょい百合短編集 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2

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