タコパしようぜ

「タコパしよーや、ミユ」


「よっしゃ。ええな。いえーい」



 今日はミユを呼んで、タコパをした。


 生地をたこ焼き器にジョババー。


 タコをバッサバッサ。


 小エビをチョロっと。


 生地を切ってクルクルッと転がす。


「ナーサ、あんた手際ええやん」


「そうか? ウチよりオカンの方がうまいんやけどな」


 タコ焼きができあがった。


 チーズも入れてある。ハズレとしてコンニャクも。


「いただきまーす。うっわ、さっそくハズレやん」


 ミユが、コンニャク焼きに当たった。


「ウチ、チーズやわ!」


 チーズドッグのように、びろーんとチーズを伸ばす。

 

「ええな! アーシやっとタコ当たったわ」


 中身がタコのタコ焼きを引き、ミユはグニグニと噛みしめる。


「なんでタコパなん? 恋バナやったら、普通のパーティでもええんちゃう?」


「たこ焼き器あっても、一緒に焼く人がいてへん」


 他のクラスメイトも誘ってみたが、タコなどの魚介が苦手な子って結構多い。


 だから妥協して、チーズやらウインナーなどで妥協してみた。


 それでも、作るのが面倒なのか、誰も来ない。

「お店で買ったほうが早いやん」

 とまで言われた。


 わかってへんなー、アンタら。


 その点、ミユは何をやるにしても楽しそうについてきてくれる。


「おー、ベーコンやんけ! アーシの引き、最強ちゃう?」


 変わり種の具材を引き当てても、ミユは笑って誘いに乗った。


「どこがよ。アンタさっきコンニャク当たったやん」

 

「せやったな! アハハ!」


 ツッコんだウチは、鶏からを引き当てる。


「生地に全然、味を入れてへんけど、うまいな」


「わざとねん。デザートもあるさかい」


 仕上げはチョコバナナだ。


 バナナを入れたタコ焼きを、チョコレートソースでいただく。


「うんっ、まっ!」


 我ながら、最高のできだ。

 

 ミユも溶けたバナナに舌鼓をうつ。


「元気出た? ミユ?」


「うん。おおきに、ナーサ」


 先日、ミユは失恋した。


 慕っていた先輩が、恋人と接吻していたのを目撃したのである。


 一ヶ月落ち込んだミユを、励まそうとした。


 みんながタコパを避けたのも、気遣ってウチとミユを二人きりにするためだったのかもしれない。


「生きとったら、タコ焼きみたいに色々あるよね。恋することも、せんことも」


「せやな。せやせや」


 人を好きになる気持ちは、ウチにはまだわからん。


 それでも、悲しんでいる人をどうすべきかは、わかっているつもりだ。


「ごちそうさま。おいしかったー。ありがとう、ナーサ」

 

「いやいや。ウチが失恋したとき、タコパで慰めてもらうから」


「まって。アーシたこ焼き器、家にないで。買わんと」


「ええって。持っていくから」


「そのたくましさがあるんやったら、失恋もすぐ立ち直るんちゃう?」

 

「立ち直らへんから!」

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