まだニポンジンはバレンタインデーを告白の日だと思ってマスカ?

 今日も、あちこちで告白タイムが繰り広げられていた。

 相思相愛になった者もいれば、相手にされない者もいる。

 チョコをもらえず、孤独に歩む者だって。


 まあ、友チョコをバラまいただけで終わった私には、関係ないけど。


「はあ。まだニポンジンは、バレンタインを告白する日だと思って消耗しているのデスネ」


 留学生アメリーが、私に愚痴をこぼした。


「そうなの?」

 

「いいデスか、ユキ? バレンタインは本来、誰に何をあげてもいいのです。感謝している人なら、男だろうと女だろうと関係ありまセン」


 そんな文化は、ほぼ東アジアに限るという。


「だから、何ももらえていないというのは、自分の身をわきまえんかい、ということなのデス。高価なプレゼントなどいらないので、人に感謝される生き方を心がけるべきなのデス。何も貢献しないだけのクレクレ君は死ね、デスヨ」


 まあ、あらかた納得だね。 


「じゃあ、友チョコっていうのが、本来のバレンタインのあり方ってこと?」


「チョコに限りません。ダディは甘いものが苦手なので、ミーはイカの燻製をあげマシタ」


「喜ばれるの?」


「ジンソーダを二本開けマシタ。お礼にアマギフを二万円ほどリピートを」


 イカクンで、二万ゲットするとは。


「なのでユキ、どうぞ」


 アメリーが、私に大きな包みをくれた。


「私にもイカクン?」


「ノー。チョコデース」


 包みの中身は、ホットココアの粉末詰め合わせだ。


「誰になにを上げてもいいデスが、チョコは温まりマス」


「友チョコ、だよね?」


 その割には、ラッピングがエラい凝っているけど。

 

「おーう……どうでしょうね?」


「じゃあさ、今日は持ち合わせがないから、ウチに遊びに来てよ。お菓子作るからさぁ、二人でこれ飲も」


「おーう。そういうところデス。ユキはジゴロ」

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