きぐるみ寝袋キャンプ
二頭のクマが、読書しながら暖を取っている。
だが、片方は私だ。
もう片方は友人のユミである。
「マヤ、動けるキグルミ寝袋、いいね」
「うん。実にいい」
「最初はバカにしていたけど、使ってみると最高」
「私もだよ。めっちゃ高いだけある。買ってよかったよね」
もう三時間近く、ゆったりとくつろいでいた。
なのに、ちっとも飽きない。
このまま眠ってしまいそうだ。
焚き火を消す必要があるから、まだ起きているが。
「不便なのは、トイレだけだね」
「だね」
「あとは、子どもに指を差されるくらいか」
「まあ、それは親の民度によるかな」
写真撮らせてとか言われたら、待ってもらいたい。
「でもさユミ、頭までかぶる必要はないと思うんだ」
「えー。かわいいじゃん」
私は提案してみたが、ユミはフードを脱ぐ気配がなかった。
「バーベキューした後だから、にんにくの臭いがクマの頭に充満しててさ」
「それは言えてるね」
わたしたちは一旦、フードを脱ぐ。
ふたりとも、汗ばんでいた。
「ユミ。痩せるためのピクニックなのに、食べたら意味なかったね」
「だって食べたいじゃん。こんなとこ来たらさ」
「たしかに」
実際、バーベキューでたらふく食べてしまったのだ。
「動けるキグルミも、そのために買ったんだから、今は汗をかこう。マヤ」
「でも、頭まですっぽり被るとクサいよ」
「そうなんだよねー」
わたしたちがキグルミを買った理由は、ずばり汗をかくため。
この後、お風呂に入る。
そのため、お酒も断っていた。
お酒なんて飲んだら、それこそまたデブコースである。
「あっついね、ユミ」
「だね。もうけっこうやせたんじゃない? マヤちょっとホホがこけがち」
私は元々ホホがコケているが。
「だといいけどね」
「もう脱ごう。コレ以上着ていると、寝袋の中が汗でジワってなっちゃう」
ユミが提案してきたので、私も乗ることにした。
焚き火を消して、温泉施設を利用する。
「はーあ。これは最高すぎる」
「絶対、すぐ寝ちゃうやつだ」
ふたりとも、もう船を漕いでいた。
だが、体重計が現実に引き戻す。
「これはダメなやつだね」
「うん。明日は朝早くに起きて、歩く」
「OK。六時ね」
酒をあきらめ、私たちはさっと眠りにつく。
翌朝、私たちは早朝散歩にでかけた。
小一時間は歩いたかも。
で、朝食のホットサンドをむさぼる。
運動した後の食事は、格別だ。
「結局、夕方と同じルーティじゃん!」
「キャンプめしがうまいのが、いけないんだよ!」
二頭のクマは、到着時よりも二キロ太って家路についた。
今夜は、やけ酒だ。
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