「女子でペアルック」って普通じゃね?

「あのさ、ナホミ。ペアルックはさすがに恥ずかしくない?」

「なんで? 制服のほうがダサくね? デートは私服っしょ、ジュナ」


 ナホミは、なんでも私と揃えたがる。

 帽子も、リングも、時計も。

 欲しがらないだけマシだが、服がかぶるとこちらがダサく見えるので困る。


「女子でペアルックって、フツーっしょ」

「そうだけど……」

「夢だったんだよね。好きな女子とペアルックで歩くの」


 ウッキウキな表情で、ナホミは私と腕を組む。

 周りの目なんて、まったく気にしていなかった。


 こちらとしては、勘弁してほしいのだが。


「ナホミ、あんた見られてるよ」

「えーっ。今ドキ女子同士のカップルなんて普通普通」

「じゃなくて、男子があんたを見てんのよ」


 男性二人組が、こちらにいやらしい視線を送ってきた。

 彼らを、ナホミはアカンベーをして追い払う。で、何事もなかったかのように歩き出すのだ。

 

 ナホミは誰もが振り返るほど、かわいい。

 おまけに、胸がやったらデカいのだ。もうやたらめったら。歩くたびに、ゆっさゆっさする。

 だから、比較されるのでちょっと苦手なのだ。


 同じ服を着ていてもナホミのほうが似合うから、こちらが色あせて見える。


 ナホミにとっては、私と会えるだけで、私と同じものを揃えるだけでうれしいご様子で。


「でもさ、やっぱジュナってかっこいいよね! ウチが着ると、娼婦臭くなる」

「そうかな? あんたの方が似合うじゃん」

「いやいや。ジュナの場合は、マニッシュっての? スラッとしててさ、憧れちゃう」


 あんたは、ムチムチしていてうらやましいと思う。 

 その脂肪を、私の胸にも分けてもらいたい。

 

 

「あんたには、主体性ってもんがないのかね?」

「えーっ、食い物だけはジュナとは別じゃん」


 私はランチにカラシ入りカツサンドを。

 ナホミの方は、ツナサラダのパンケーキを頼んでいる。


「デザートは、カフェで取るって言ったじゃん。なんで今食べるのよ?」

「これはデザートじゃありませんー。炭水化物だからー。ゴハンなのゴハン。知ってる? 砂糖入りがホットケーキで」

「知ってますぅ。その説が間違っている、ってこともね」


 ナホミをマネして、私も口をとがらせた。

 

「マジで? 信じてたんだけど?」

「海外では、パンケーキって呼ぶのが主流。ホットケーキは和製英語」

 

 でも、私たちの関係って、こんなかも。

 どっちかがホットケーキで、どっちかがパンケーキ。


「ねえ」


 私とナホミが、同時に声を発する。


「そっちからどうぞー」

「いいよ。そっちから話してよ」

「じゃあ聞くね。うちらってどっちがホットケーキ?」


 頭の中までペアルックかよ。

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