黒髪の黒ギャル

 私の隣の席に、黒髪の黒ギャルが座った。


 なんだ、ミュージシャンかダンサーか?


 私の隣はたしかにギャルの席だ。

 しかし、茶髪白ギャルだったはずである。


「なに見てんの、サナ?」

「え、いえ。って、え? ジュリなの!?」


 黒ギャルの声は、白ギャルではないか。

 しかも、黒いとは言えたしかによく見知った顔である。


「ジュリ、どうしたの?」

「いや、あんた黒髪おさげじゃん? だから、マネしてみよっかなって」


 私は黒髪おさげだが、アンタの場合はドレッドヘアといいますの。

 レゲエはさすがに、私はたしなみませんのよ?

 

「なんのマネだ?」

「もうすぐ期末あるじゃん? 髪型変えたら、サナみたいに頭も良くなるかなって」


 なるかい!

 髪型変えただけで秀才になれるなら、私だって毎日塾じゃなくて美容院に通いますよ!


 まあ、とにかく動機はわかった。

 

「けど、なんで肌まで黒くした?」

「だってさ、バランスって大事じゃん?」


 なんのバランスやねん!?

 黒に黒で、なんかベテランのミュージシャンみたいになってるし!

 絶妙に似合っているのがなんかムカつくわ!


「髪型を変えるより、ちゃんとマジメに勉強しようよ」

「そうする。勉強教えて」


 ジュリはこういうとき、私に丸投げしない。

 そこが偉いんだけど。


「でもなんか見た目重いね」

「だね。ベテランのジャズシンガーみたい」

「カッコイイたとえだねぇ。でもそれだと、結構老けて見えるってわけか」


 ジュリも、そこは気にしているみたい。


「でもマジメさんに見えるから、頭良さげに見えん?」


 本当に頭のいい人は、頭良さげには見せないと思うんだ。

 知性って、にじみ出るものだから。


「ドレッドヘアだと、秀才というより仙人に見えるよ」

「マ? ギャルの歳で仙人とか、枯れすぎでしょ。ああ、でも仙人だから数多良さげには見えてるんだよね」


 見えない見えない。ていうかその発想をする時点で頭悪すぎるよ。


「見た目より中身だよ。勉強しよう。勉強すれば秀才にも仙人にもいつかなれるよ。保証はしないけど」

「マ? でも、期末乗り越えられたらいいや」

 

 それがいい。

 高望みはしないほうが、身のためだ。

 身の丈に合った知性があってジュリ並みのルックスなら、この世は案外うまくいく。


「サナは黒くせんの?」

「髪は元々黒いよ」

「違くて。肌」

「するかいっ。黒くなんて」

「でもやみつきになるよ」

「いやいや誘惑しないで」

「黒くしたらモテるよ。サナだったら」


 マ? それこそマ? って感じなのだが。


 後日、黒くしたらやたらモテた。

 女子から。

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